インフルエンザワクチンの予防接種を開始した医療機関も多いと思います。

「今年も、もうそんな時期になってしまったな」と一年が経つのが本当に早いと思います。

というわけで、今日はインフルエンザの治療薬に関する話題( Lancet. 2024 Aug 24;404(10454);753-763.)です。

Antivirals for treatment of severe influenza: a systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials – The Lancet

 

世界保健機関(WHO)のインフルエンザ診療ガイドラインの改訂を支援するために、重症インフルエンザ患者の治療における抗ウイルス薬の有用性を評価する目的で、系統的レビューとネットワークメタ解析が行われました。

医学関連データベースを用いて、2023年9月20日までに発表された論文を検索しました。

対象は、インフルエンザが疑われるか、検査で確認された入院患者を登録し、直接作用型抗インフルエンザウイルス薬をプラセボ、標準治療、あるいは他の抗ウイルス薬と比較した無作為化対照比較試験です。

注目すべき主要アウトカムとして、症状改善までの期間、入院期間、死亡率のほか、侵襲的人工換気への移行、人工換気の期間、退院先、抗ウイルス薬耐性の発現、有害事象、治療関連有害事象、重篤な有害事象などの評価を行いました。また、頻度論に基づく変量効果モデルを用いたネットワークメタ解析でエビデンスを要約し、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチによりエビデンスの確実性を評価しました。

 

8件の試験(1,424例、平均年齢の幅36~60歳、男性の割合の幅43~78%)が系統的レビューの対象となり、このうち6件をネットワークメタ解析に含まれました。

季節性インフルエンザおよび人獣共通インフルエンザにおけるオセルタミビル、ペラミビル、ザナミビルの死亡率に対する効果に関しては、プラセボまたは標準治療と比較した場合、どの薬剤も有効性に差はなく、エビデンスの確実性は「非常に低(very low)」でした。また、オセルタミビルとペラミビル、オセルタミビルとザナミビル、ペラミビルとザナミビルの比較でも、死亡率に対する有効性に差を認めず、エビデンスの確実性はいずれも「非常に低」でした。

季節性インフルエンザによる入院期間は、プラセボまたは標準治療に比べオセルタミビル(平均群間差:-1.63日、95%信頼区間[CI]:-2.81~-0.45)およびペラミビル(-1.73日、-3.33~-0.13)で短縮したものの、いずれもエビデンスの確実性は「低(low)」でした。

症状改善までの期間については、標準治療と比較してオセルタミビル(平均群間差:0.34日、95%CI:-0.86~1.54、エビデンスの確実性「低」)およびペラミビル(-0.05日、-0.69~0.59、エビデンスの確実性「低」)で差がほとんどないか、差を認めませんでした。

 

有害事象および重篤な有害事象の頻度には、オセルタミビル、ペラミビル、ザナミビルで有意な差はなく、エビデンスの確実性はいずれも「非常に低」でした。

 人工換気への移行、人工換気の期間、抗ウイルス薬耐性の発現、治療関連有害事象についてペアワイズメタ解析を行ったところ(ネットワークメタ解析は行えなかった)、人工換気への移行、抗ウイルス薬耐性の発現、治療関連有害事象に関してはザナミビルに対するオセルタミビルのリスク比は1.20~2.89の範囲でした(エビデンスの確実性はいずれも「非常に低」)。退院先を評価した試験はありませんでした。

 

以上から、重症インフルエンザの入院患者において、標準治療やプラセボと比較してオセルタミビルおよびペラミビルは、入院期間を短縮する可能性があるものの、エビデンスの確実性は低いことが分かりました。

 

今年もあっという間にインフルエンザシーズンがやってきます。

重症化した後の抗ウイルス薬の効果が不明確である以上、インフルエンザシーズンをこれから迎える側としては、感染予防に重きを置いた方が良いのでしょう。

ワクチン接種も含めて、今のうちから、計画性を持って、インフルエンザシーズンに備えましょう。 (小児科 土谷)