SARS-CoV-2感染から4~8週間後に生じる小児多臓器炎症性症候群(MIS-C)の病態に関する研究(Goetzke CC, et al. TGFβ links EBV to multisystem inflammatory syndrome in children. Nature (2025)を紹介します。

TGFβ links EBV to multisystem inflammatory syndrome in children | Nature

 

MIS-C患者の血清TGFβ値(中央値:398 pg/ml)は健常小児(132.2 pg/ml)や非MIS-C感染児(63 pg/ml)と比べて大幅に高く、重症成人患者(415 pg/ml)と同程度でした。さらに免疫療法後、MIS-C患者のTGFβレベルは低下し炎症反応も緩和されました。

また、このTGFβの過剰産生がT細胞の機能不全を引き起こすことも示されました。具体的には、MIS-C患者のT細胞はウイルス抗原に対する反応性が著しく低下しており、特にCD4+およびCD8+メモリーT細胞の活性化マーカーであるCD69の発現が抑制されていました。この免疫抑制状態はTGFβの中和抗体で回復し、T細胞の抗原特異的応答が改善したことから、TGFβがT細胞の機能を障害することが示唆されました。さらにT細胞受容体(TCR)レパトアを解析したところ、EBVに特異的なT細胞の増殖が確認されました(特にTCRVβ21.3+ T細胞が顕著に増加しており、これはEBV感染B細胞を排除するためのクローンと一致していた)。さらに、MIS-C患者の血清はEBVの再活性化を誘導する作用を持っていました。

以上からTGFβの過剰産生がT細胞の細胞傷害活性を抑制し、EBVの再活性化を招くことで炎症が悪化するものと考えられました。実際にMIS-C患者ではEBVの血清陽性率が健常小児よりも高く、MIS-CがEBV関連疾患の一形態である可能性も示唆されました。

 

昔、担当患者さんが慢性活動性EBウイルス感染症だったこともあり、個人的にEBウイルスにあまり良い思い出が無いのですが・・・EBウイルス感染がMIS-Cの病態に一役買っている模様です。

SARS-Cov-2も、EBウイルスも、本当に「嫌な奴」ですな。 (小児科 土谷)