日本臨床内科医会によるインフルエンザに関する前向き多施設コホート研究の統合解析が行われ、インフルエンザワクチンの効果に関する結果が出ていたので簡単に紹介させて頂きます( Journal of infection and public health. 2025 Aug 25;18(11);102934.)。

Influenza vaccine effectiveness over 17 seasons in a large Japanese cohort: Analyses by age, virus type, underlying diseases and seasons before the COVID-19 pandemic – ScienceDirect

 

2002~03年から2018~19年までの17シーズンにわたり、全国543施設から14万8,108例の外来患者を登録し、シーズン前に接種状況を登録、シーズン中にはインフルエンザ様症状で受診した患者の迅速抗原検査結果を登録、シーズン終了後に接種群と非接種群(対照群)における罹患率から毎年の発症予防効果(有効率)を算出しました。2002~14年は3価、2015~19年は4価の不活化ワクチンが使用されていました。ロジスティック回帰分析による調整後、17年間におけるワクチンの発症予防効果を推定しました。本解析にはCOVID-19パンデミック前のデータが使われており、超高齢化とCOVID-19後のインフルエンザ再興を背景に、年齢層、基礎疾患、ウイルスタイプ、シーズンごとのワクチン有効性評価を目的としていました。

 

その結果、14万8,108例の参加者の年齢中央値は58歳、女性が58.7%でした。解析の結果、発症予防におけるワクチン有効率(調整後のシーズン別プール解析)は0~15歳で56%、16~65歳で51%と有意な有効性が示されたが、50歳以上では有効性が徐々に低下し、とくに80歳以上では有意な発症予防効果は確認されませんでした。

基礎疾患を有する未接種者の罹患率は、15歳以下では基礎疾患のない患者よりも有意に高く(p<0.001)、未接種の気管支喘息患者のインフルエンザ罹患率は、疾患なし患者より高く(10.9%対4.0%)、とくに15歳以下の小児(24.2%対12.9%)で顕著でした。気管支喘息の小児における調整後ワクチン有効率は60%と疾患なし小児(47%)よりも高かったことが分かりました。

インフルエンザAに対する調整後のワクチンの有効性は40代まで有意であり、インフルエンザBに対しては20代まで有意でした。また、インフルエンザAの未調整のワクチン有効性は40%から15%まで低下(2002~09年と2010~19年の比較)しており、これは近年のA香港型における抗原変異や卵馴化による可能性が示唆されました。

 

以上から、季節性インフルエンザワクチンが40歳未満の若年層や基礎疾患のない人々において中等度の有効性を示す一方、年齢とともにその有効性は低下し、80歳、とくに90歳以上では有意な発症予防効果は確認されないことが分かりました。

 

このメカニズムは十分に解明されていませんが、ワクチン応答が低下する可能性のある高齢者に対しては、高用量ワクチン接種やアジュバント添加ワクチンなどの開発が求められますね。 (小児科 土谷)