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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

long COVIDの病態 -その他⑪-

海外の論文ですが、重症COVID-19患者の死後脳で、老化細胞が増加していることが報告(Nat Aging (2023).)されました。

Senolytic therapy alleviates physiological human brain aging and COVID-19 neuropathology | Nature Aging

 

新型コロナ重症感染者では、前頭葉に老化マーカーであるp16を発現した細胞が多く出現しており、平均して対照群の約7倍も多く存在していたことが分かりました。

 

そこで、脳の立体培養系であるヒト脳オルガノイドにSARS-CoV-2ウイルスを感染させると、細胞老化が誘導され、トランスクリプトーム解析によりSARS-CoV-2特有の炎症の存在が示されました(先の知見が再現された)。更に、SARS-Cov-2の変異株の中ではデルタ株が最も老化細胞の数を増やす能力が高いこともわかりました。

一方、感染した脳オルガノイドの細胞老化を抑制すると、ウイルスの複製が阻害され、異なる神経細胞集団における老化が抑制されました。

ヒトACE2過剰発現マウスにおいて、NavitoclaxやD+Q、Fisetinといった老化抑制剤を使用すると、COVID-19の臨床転帰を改善し、ドパミン作動性ニューロンの生存を促進し、ウイルスおよび炎症性遺伝子の発現を抑制しました。

以上より、新型コロナウイルス感染によって起きる神経系障害の原因の一つとして、ウイルス感染自体による脳神経系の炎症とそれに伴って起きる老化細胞の増加が示唆され、治療として老化防止剤が有効である可能性が示唆されました。 (小児科 土谷)

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