院長先生のブログ
妊婦さんへのRSVワクチンの効果
妊婦さんへのRSVワクチン投与による乳児のRSウイルス関連下気道感染症の予防効果について調べた論文( The New England journal of medicine. 2023 Apr 20;388(16);1451-1464.)です。
Bivalent Prefusion F Vaccine in Pregnancy to Prevent RSV Illness in Infants | NEJM
18ヵ国で、妊娠24~36週、49歳以下の健康な妊婦を対象に試験を行いました。被験者を無作為に2群に割り付け、一方には2価RSVpreFワクチン(120μg)を、他方にはプラセボをいずれも単回筋肉内投与しました。
有効性に関する主要エンドポイントは、生後90日・120日・150日・180日以内の乳児における、診察を要した重症RSV関連下気道感染症と、診察を要したRSV関連下気道感染症としました。ワクチンの有効性を示す信頼区間(CI)下限値(90日以内が99.5%CI値、それ以降は97.58%CI値)は20%超と規定しました。
その結果、2020年6月17日~2022年10月2日に7,392例の妊婦が無作為化され、そのうち7,358例(RSVpreFワクチン群3,682例、プラセボ群3,676例)が接種および評価を受けました。乳児ではRSVpreFワクチン群3,570例とプラセボ群3,558例が組み込まれました。
生後90日以内の、診察を要した重症RSV関連下気道感染症は、RSVpreFワクチン群の乳児で6件、プラセボ群では33件でした(ワクチン有効性:81.8%、99.5%CI:40.6~96.3)。同様に生後180日以内では19件と62件でした(ワクチン有効性:69.4%、97.58%CI:44.3~84.1)。
一方、診察を要したRSV関連下気道感染症については、生後90日以内でRSVpreFワクチン群の乳児24件、プラセボ群56件が報告され(ワクチン有効性:57.1%、99.5%CI:14.7~79.8)、統計学的な有効性を示しませんでした。
尚、ワクチン投与1ヵ月以内または生後1ヵ月以内に発生した有害事象の発生率は、RSVpreFワクチン群(妊婦13.8%、乳児37.1%)とプラセボ群(13.1%、34.5%)で同程度でした。
以上から、妊婦さんへの2価RSV融合前F蛋白ベース(RSVpreF)ワクチン投与は、乳児の重症RSV関連下気道感染症に対して予防効果があり、安全性にも問題がないことが分かりました。
乳児早期のRSV感染症は重症化することが多いことがしられています。
妊婦さんへRSVワクチンを投与することで、重症RSV感染症を予防出来たら嬉しいですねw (小児科 土谷)