院長先生のブログ
動脈硬化のリスクが高い睡眠のとり方は?
昨日に引き続き「睡眠」に関する話題です。
アテローム性動脈硬化と睡眠のとり方との関連性について調べた論文です(Journal of the American Heart Association. 2023 Feb 21;12(4);e027361. pii: e027361.)。
2010~13年に記録された2,032例(平均年齢±標準偏差[SD]:68.6±9.2歳[範囲:45~84歳]、女性:53.6%)のデータを用いました。評価項目に用いたマーカーは、冠動脈カルシウム、頸動脈プラークの有無、頸動脈内膜-中膜の厚さ、および足首-上腕指数でした。睡眠の規則性は睡眠時間と就寝タイミングで、個々の7日分のSDを定量化しました。解析には相対リスク回帰モデルを使用し、有病率と95%信頼区間[CI]を計算しました。なお、解析モデルは人口統計、心血管疾患の危険因子、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、睡眠時間、中途覚醒など、睡眠特性に合わせ客観的に評価・調整しました。
結論としては、7日間を通して不規則な睡眠を取った参加者は、毎晩ほぼ同じ睡眠時間だった参加者よりも、アテローム性動脈硬化を発症する可能性が高かったことが分かりました。
睡眠が不規則な人の特徴は、白人以外の人種では「現喫煙者の可能性が高い」「平均年収が低い」「勤務がシフト制もしくは無職の可能性が高い」「BMIが高い」ことでした。
調整後、より規則的な睡眠時間(SD≦60分)の参加者と比較したところ、睡眠時間の不規則性が大きい(SD>120分)参加者は、冠動脈カルシウム負荷が高く(SD>300、有病率:1.33、95%[CI]:1.03~1.71) 、足首上腕指数が異常値である傾向にあることが分かりました(SD<0.9、有病率:1.75、95%[CI]:1.03~2.95)。
より規則的な就寝タイミングの参加者(SD≦30分)と比較したところ、就寝時間が不規則な参加者(SD>90分)は、冠動脈のカルシウム負荷が高い可能性が強いことも分かりました (有病率:1.39、95%[CI]:1.07~1.82)。関連性は、心血管疾患の危険因子、平均睡眠時間、閉塞性睡眠時無呼吸、中途覚醒を調整後も変わりませんでした。
そして、睡眠の不規則性、とくに睡眠時間の長さのばらつきは、アテローム性動脈硬化のいくつかの無症候性マーカーと関連していたことが分かりました。
以上から、45歳以上で睡眠不足や不規則な睡眠が続くとアテローム性動脈硬化の発症リスクが高まる可能性があることが分かりました。
自分も、正しく「その年代」ですし、睡眠不足や不規則な睡眠にならないように気を付けたいと思います。(小児科 土谷)