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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

小児期の被虐体験のその後の影響は?

小児期の被虐体験が成人期における心血管疾患リスク因子と関連があるのか調べた論文(Journal of the American Heart Association. 2022 05 03;11(9);e023244. )です。

Association of Exposure to Abuse, Nurture, and Household Organization in Childhood With 4 Cardiovascular Disease Risks Factors Among Participants in the CARDIA Study | Journal of the American Heart Association (ahajournals.org)

 

冠動脈疾患リスク因子に関する長期コホート研究である「CARDIA(Coronary Artery Risk Development in Young Adults)研究」のデータを使用しました。CARDIA研究では、1985~1986年に米国内4都市で登録された5,115人(年齢18~30歳、平均25歳)を2015~2016年まで追跡し、30年間にわたり心血管疾患リスク(肥満、2型糖尿病、高血圧、高脂血症)を評価しました。人種および性で層別化したCox比例ハザードモデルを用いて、小児期の被虐体験と心血管疾患リスク因子の発症との関連を検討しました。

なお、参加者が33~45歳の時点で、子どものころの被虐体験(身体的または精神的な虐待)の有無、および養育環境(周囲の大人から愛情を受けていたか、家庭内の秩序が保たれていたか)に関する質問を行っています。

 

その結果、参加者の約30%が、小児期に「しばしば」虐待を受けていたことが分かりました。約20%は「まれに」虐待を受けたと回答し、残りの約半数は被虐体験がありませんでした。

 

そして、小児期に被虐体験のある人には2型糖尿病または高コレステロール血症が多く、肥満や高血圧は被虐体験の有無と関連は認められませんでした。被虐体験のある場合、白人女性は26%、白人男性は35%、高コレステロール血症のリスクが高く、また白人男性は2型糖尿病のリスクも81%高かったことが分かりました。被虐体験があり、かつ秩序のない家庭環境で育ったと回答した黒人男性と白人女性は、高コレステロール血症のリスクが3.5倍以上高かったことも分かりました。

一方、被虐体験のある人でも、秩序のある家庭環境で育った人は、高コレステロール血症のリスクが34%低く、被虐体験があると回答した黒人女性では心血管疾患リスクの上昇は認められませんでした。

 

以上から、子どものころの被虐体験と、成人後の高コレステロール血症や2型糖尿病の発症リスクには関連性があるみたいです。

この病態のメカニズムや人種・性別によって影響に違いが出る背景については詳しく分かっていませんが、被虐体験をもつ子どもたちへの心血管疾患の予防介入という観点からも、こういうデータは覚えておいて良いでしょう。 (小児科 土谷)

 

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