院長先生のブログ
アトピー性皮膚炎の精神面への影響は?
小児におけるアトピー性皮膚炎(AD)とメンタルヘルスの関連について調べた論文(JAMA dermatology. 2021 Oct 01;157(10);1200-1208.)を紹介します。
Association of Atopic Dermatitis and Mental Health Outcomes Across Childhood – PMC (nih.gov)
小児および思春期の複数時点で、ADと内在化問題行動およびうつ症状との関連を調べ、また喘息/鼻炎、睡眠、炎症など潜在的な媒介因子を調べる住民ベースの縦断的出生コホート研究を行いました。
UK Avon Longitudinal Study of Parents and Childrenの登録児について、出生から平均10.0年間(SD 2.9)追跡した児のデータを解析しました。データの収集期間は1990年9月6日~2009年12月31日で、解析は2019年8月30日~2020年7月30日に行われました。
屈面性皮膚炎(flexural dermatitis)に関する標準化質問票によって測定した年間AD有病率を、月齢6ヵ月~18歳の11時点で評価しました。主要評価項目は、うつ病の症状(10~18歳の5時点でShort Moods and Feelings Questionnaireを用いて得た小児からの回答で測定)、内在化問題行動(4~16歳の7時点でEmotional Symptoms subscale of the Strength and Difficulties Questionnaireを用いて得た母親からの回答で測定)でした。
その結果、解析には1万1,181例の小児が含まれました(男子5,721例[51.2%])。
期間中のうつ症状有病率は、6.0~21.6%、内在化問題行動は10.4~16.0%でした。
軽症~中等症ADは、うつ症状との関連は認められませんでしたが、内在化問題行動は4歳時に関連が認められました(補正後モデルにおける小児期全体の平均増大オッズ:29~84%)。
重症ADは、うつ症状(補正後オッズ比:2.38、95%信頼区間[CI]:1.21~4.72)、内在化問題行動(1.90、1.14~3.16)と関連していました。
以上から、重症ADは、小児期のうつ症状および内在化症状を呈する可能性を約2倍増大することが、また、軽症~中等症ADはうつ症状との関連は認められなかったものの、4歳という早い時期に内在化問題行動との関連が認められたことが分かりました。
アトピー性皮膚炎は子どもの心理面様々な悪影響を与えます。
日々のスキンケア、そしてアトピー性皮膚炎に対する早期介入を行い、良い皮膚を目指しましょう!(小児科 土谷)