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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

心肺蘇生時間1分ごとの患者アウトカムは?

院内心停止に関する大規模レジストリの後ろ向きコホート研究において、心肺蘇生時間1分ごとの患者アウトカムの時間依存確率を定量化し、生存および良好な神経学的アウトカムの確率について検討した論文(BMJ (Clinical research ed.). 2024 Feb 07;384;e076019.)を紹介します。

Duration of cardiopulmonary resuscitation and outcomes for adults with in-hospital cardiac arrest: retrospective cohort study | The BMJ

米国心臓協会(AHA)のGet With The Guidelines-Resuscitation (GWTG-R)レジストリにおいて、2000~21年に参加施設で院内心停止を来した患者で、蘇生処置拒否指示がなく心肺蘇生を受けたすべての成人患者(18歳以上)を特定し、解析しました。

主要アウトカムは、退院までの生存および退院時の良好な神経学的アウトカム(脳機能カテゴリー[CPC]スコア1または2と定義、スコアの範囲は1~5、スコアが高いほど障害が重度、5は脳死)としました。

蘇生中止に関するすべての決定が正確であったと仮定し、各時点で最初の自己心拍再開を待っている患者が、その時点を超えてさらに心肺蘇生を受けた場合の、その後退院まで生存する、あるいは良好な神経学的アウトカムが得られる時間依存確率を推定しました。

 

その結果、院内心停止により心肺蘇生を受けた成人患者は40万1,697例特定され、このうち除外基準を満たした患者を除く34万8,996例が解析対象となりました(退院時の神経学的アウトカムが不明であった1万5,645例は、同アウトカムの解析から除外した)。

 

34万8,996例中23万3,551例(66.9%)で自己心肺再開が得られ、胸骨圧迫開始から最初の自己心拍再開までの時間の中央値は7分(四分位範囲[IQR]:3~13)でした。7万8,799例(22.6%)が生存退院しました。一方、自己心拍再開が得られなかった11万5,445例(33.1%)では、胸骨圧迫開始から蘇生中止までの時間の中央値は20分(IQR:14~30)でした。

 

退院時の神経学的アウトカムを評価できた33万3,351例のうち、良好な神経学的アウトカムを達成したのは5万2,104例(15.6%)でした。

心肺蘇生時間1分時点で、自己心拍再開未達成患者の生存および良好な神経学的アウトカムの確率は、それぞれ22.0%(7万5,645/34万3,866例)および15.1%(4万9,769/32万8,771例)でした。同確率は心肺蘇生時間が長くなるとともに減少し、心肺蘇生時間39分時点で生存の確率は1%未満心肺蘇生時間32分時点で良好な神経学的アウトカムの確率は1%未満でした。

 

これまで心肺蘇生時間と患者転帰との関連性について、院内心停止患者で十分に調査されていませんでした。

良好なアウトカムが得られる客観的確率を提供するデータで、蘇生の現場で指針となり得るものと感じました。 (小児科 土谷)

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