メニュー

   

お電話

見附市小児科 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

心停止状態での搬送は、現場で蘇生継続した場合と比べて生存退院率が低い

院外心停止(OHCA:Out-of-Hospital Cardiac Arrest)の場合、現場にとどまって蘇生行為を続けるか、専門施設への搬送を優先するのか(いわゆるScoop and Run方式)の判断を迫られることが多いです。

そうした現場の悩みを解決すべく行われた調査の結果を紹介します(JAMA. 2020 Sep 15;324(11);1058-1067.)。

Association of Intra-arrest Transport vs Continued On-Scene Resuscitation With Survival to Hospital Discharge Among Patients With Out-of-Hospital Cardiac Arrest – PMC (nih.gov)

 

北米の10施設が参加した地域住民ベースの前向きレジストリのデータを用いて、心停止状態での搬送と現場での蘇生法継続による転帰の改善効果を比較しました。Resuscitation Outcomes Consortium(ROC)Cardiac Epidemiologic Registryから、EMSによる治療を受けた非外傷性の成人OHCA患者のデータを前向きに、連続的に収集しました。登録期間は2011年4月~2015年6月で、フォローアップは退院または死亡まで実施されました。

 

その結果、4万3,969例が解析に含まれました(年齢中央値は67歳(IQR:55~80)、37%が女性)。

86%はプライベートな場所で心停止を発症しており、49%はバイスタンダーまたはEMSによって目撃され、22%はショック適応で、97%は院外で2次救命処置を受けていました。

1万1,625例(26%)が心停止状態で搬送され、3万2,344例(74%)はROSC達成または蘇生法が終了するまで現場で処置を受けていました。

 

全体の生存退院割合は、心停止で搬送群が3.8%、現場蘇生群は12.6%でした(リスク差:-8.8%、95%信頼区間[CI]:-8.3~-9.3)。傾向マッチコホート(2万7,705例)の生存退院の割合は、心停止で搬送群(9,406例)が4.0%、現場蘇生法群(1万8,299例)は8.5%でした(リスク差:-4.6%、95%CI:-5.1~-4.0)。

 

良好な神経学的アウトカムの達成割合は、全体(心停止搬送群2.6% vs.現場蘇生法群10.2%、リスク差:-7.6%、95%CI:-8.2~-7.0)および傾向マッチコホート(2.9% vs.7.1%、-4.2%、-4.9~-3.5)のいずれにおいても、心停止で搬送群で低かったことが分かりました。

 

傾向マッチコホートのサブグループ解析では、ショック適応(リスク比:0.55、95%CI:0.45~0.68)、ショック非適応(0.63、0.53~0.74)、EMS目撃(0.58、0.50~0.66)、EMS非目撃(0.32、0.25~0.41)の心停止患者のすべてで、心停止で搬送群は現場蘇生群よりも生存退院割合が低かったことが分かりました。

 

以上から、院外心停止(OHCA)患者の心停止状態での搬送は、現場で蘇生継続群に比べて生存退院の割合が低く、神経学的アウトカムも不良であることが分かりました。

 

大規模とはいえ、後ろ向き研究の結果なので、この研究から決定的な推奨事項は出しにくいと思います(強制的にScoop and Runとしないってところまででしょうか)。

そして、Scoop and Run群の「生存患者の半数以上(61%)」は病院に到着する前に蘇生されていたこともわかっており、専門病院で治療するメリットを得られる前にほぼ決着はついていた!って感じは実際の自分の肌感覚とも一致していましたw

 

いずれにせよ、院外心停止に遭遇したら、蘇生行為は「なるべく早く開始し、人は呼べるだけ呼ぶ」という原則には変わりありませんので、お忘れ無く。 (小児科 土谷)

この記事をシェアする