院長先生のブログ
機能性チック様行動の鑑別

COVID-19によるパンデミック後に機能性チック様行動(functional tic-like behaviors;FTLB)を呈する子どもを見かけるようになりました。
原発性チックみたいな動作や発声を認めますが、症候で両者を見分けることが出来るのか?について検討した研究を紹介します。
対象は20歳未満の236名で、原発性チック195名(75%男性;平均年齢10.8歳)と機能性チック様行動(FTLB) 41名(98%女性;16.1歳)です。
二変量モデルでは、FTLBはcopropraxia;下品な動作をする(オッズ比15.5)、単語を言う(14.5)、coprolalia;下品な言葉を言う(13.1)、popping;ぽんと音を立てる(11.0)、whistling:口笛を鳴らす(9.8)、単純な頭部の動き(8.6)、自傷行為(6.9)と最も関連していました。
多変量モデルでは、FTLBは単語を言う(13.5)および単純な頭部の動き(6.3)、年齢と関連していました。
逆に、原発性チックでしばしば認めるthroat clearing tics(咳払いする動作)はFTLBの12.2%のみと少ないことが分かりました(0.2)。
以上から、単純な頭の動きと言葉の発音を認め、咳払いする動作を認めない場合は症候学的にはFTLBを考えるということになります、逆に3つの音韻チック(popping noises, whistling,clicking)はトゥレット症候群ではまれということも分かりました(それぞれ2%,4%,6%)。
混雑する外来診療中に両者を鑑別することは難しいので、参考にしたいと思います。 (小児科 土谷)