COVID-19はしばしば神経系に後遺症を残します。その頻度は国や地域によって異なりますが、アメリカでは感染者の1割弱でこのような後遺症を過去に経験、あるいは現在も持っている、と言われています。

どうして神経学的後遺症が出るのか、出た場合にはどのような治療が有効なのかについてはまだ定説がありません。今日はこれに関連した話題(Proc Natl Acad Sci U S A
. 2026 Jan 13;123(2):e2530209123. doi: 10.1073/pnas.2530209123. Epub 2026 Jan 7.)にしたいと思います。

Combination antiviral and anti-inflammatory therapy mitigates persistent neurological deficits in mice post SARS-CoV-2 infection | PNAS

 

マウスに適応させた特定の新型コロナウイルス株を用いてマウスに感染を起こすと、マウスの脳で病理的変化が起きて、特に嗅球と黒質のドーパミン作動性ニューロンが長期にわたって欠失するという現象が見られました。この部位ではウイルスもウイルス由来タンパク質(ex. スパイクタンパク質)は認められず、ヒトの神経変性疾患で見られる持続的なミクログリアの活性化と炎症性遺伝子発現増加が起きていたことが分かりました(マウスではこれに該当する神経行動障害が出ていた)。


これに対して、抗ウイルス薬(パキロビット+ラゲブリオ)投与だけで治療すると、一定程度の症状改善が見られたものの、抗ウイルス薬とコルチコステロイドを併用投与した時は、より強い効果が見られ、感染後3日経過した場合でも、両剤の併用によって行動機能を回復させることができたとのことです。


以上から、著者らはlong COVIDの病態では、脳(特に嗅球や黒質)で二次的に起きる炎症が原因となっている可能性(つまり宿主側の過剰な防御反応が後遺症を引き起こしている可能性)があり、実際感染した場合は早期から炎症を抑えることが神経系の後遺症予防につながるであろう、と結論付けています。

 

マウスの実験モデルで得られた知見ですが、long COVIDの病態には宿主側の過剰な防御反応が関与している可能性があるみたいです。

ヒトではどうなのか?今後の報告を待ちたいと思います。 (小児科 土谷)