院長先生のブログ
肥満がCOVID-19のリスク因子とされる理由
肥満はCOVID-19のハイリスク因子として知られています。
まーそうなんだろう~っと深く考えていなかったので、その理由を探してみました。
SARS-CoV-2ウイルスの脂肪組織への感染が重症化に関与するかを検証するため、COVID-19による剖検例(入院後1~12日後に死亡)の評価と、in vitroでのSARS-CoV-2ウイルス感染に対する脂肪組織の反応について検討した論文(Sci Transl Med. 2022 Dec 7;14(674):eabm9151.(doi.org/10.1126/scitranslmed.abm9151))を紹介します。
剖検例では、脂肪細胞にSARS-CoV-2 RNAを確認し、それに伴う炎症細胞浸潤も確認されました。感染の標的となる細胞として、脂肪細胞および炎症性脂肪組織常在マクロファージが同定されました。成熟脂肪細胞はSARS-CoV-2感染に対して許容状態であった。マクロファージは不稔感染(ウイルスの増殖が途中で終わり完全なウイルスが作られないため細胞破壊が起こらないこと)を示したものの、SARS-CoV-2ウイルスは感染マクロファージとバイスタンダー脂肪前駆細胞の両方で炎症反応を引き起こしていました。
脂肪組織へのSARS-CoV-2ウイルス感染が、脂肪細胞内でのウイルス複製、および脂肪組織に存在するマクロファージへの感染による局所および全身性炎症の誘発を起こして、COVID-19の重症化に寄与する可能性が示唆されました(肥満がCOVID-19の予後不良因子とされる機序と思われます)。
これまで事実として分かっていたことが、時間を経て、少しずつそのメカニズムが解明されつつあります。このような知見の積み重ねが将来提供される医療サービスに繋がるのです。
担当医の先生や研究者の皆様には本当に頭が下がります。 (小児科 土谷)