院長先生のブログ
1歳時のスクリーンタイムと発達の関連
1歳時のテレビやスマートフォンを見る時間(スクリーンタイム)が、特定の領域の発達の遅れと関連するか検討した論文( JAMA pediatrics. 2023 Oct 01;177(10);1039-1046.)です。
東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査に参加している母子7,097組(子どもの51.8%は男児)を対象に、子どもが1歳時でのスクリーンタイムと2歳時および4歳時の5つの発達領域における遅れとの関連が検討されました。
親への調査から子どもが1歳時のスクリーンタイムに関する情報を入手し、1時間未満、1時間以上2時間未満、2時間以上4時間未満、4時間以上の4つに分類しました。
子どもが2歳時と4歳時に、日本語版ASQ-3(Ages and Stages Questionnaires, Third Edition)を用いて発達の遅れについて評価しました。ASQ-3は、コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人的・社会的スキルの5領域について、それぞれ0〜60点で評価するもので、総スコアが平均から−2標準偏差以下だった場合を「発達に遅れがある」とみなしました。
その結果、1歳時の1日当たりのスクリーンタイムは、1時間未満が48.5%(3,440人)、1時間以上2時間未満が29.5%(2,095人)、2時間以上4時間未満が17.9%(1,272人)、4時間以上が4.1%(290人)でした。スクリーンタイムが長い子どもの母親には、年齢が若い、初産である、学歴が低い、所得や世帯の教育水準が低い、産後うつ病を有する率が高いという特徴がありました。
そして、1歳時の4時間以上のスクリーンタイムは、2歳時および4歳時のコミュニケーション領域(2歳時:オッズ比4.78、95%信頼区間3.24〜7.06、4歳時:同2.68、1.68〜4.27)と問題解決領域(2歳時:同2.67、1.72〜4.14、4歳時:同1.91、1.17〜3.14)における発達の遅れと有意に関連していることが分かりました。
この論文では娯楽目的と教育目的でのスクリーンタイムの比較を行っていないというlimitationはありますが、1歳時のスクリーンタイムが特定の領域の発達の遅れと関連する可能性があるということは知っておきましょう。
とはいえ、スクリーンタイムをゼロにすることは現実的ではないので、スクリーンタイムを適量にとどめ(何事もバランスが大事)、より多くの時間を現実世界での交流に費やしていきましょう! (小児科 土谷)