院長先生のブログ
若年発症の認知症発症に関わる15の要因
昨日に引き続いて、認知症に関する話題です(今回はキノコとは無関係です)。
65歳未満の若年発症認知症についてはよく分かっておらず、本当の原因が何であるか正確には分かっていません。今回は若年発症(65歳未満)認知症の発症に関わる要因に関する論文(JAMA Neurol. 2024 Feb 1;81(2):134-142.)を紹介します。
UK Biobankのデータを用いた前向きコホート研究です。
35万6052人の参加者を対象とした8年間の追跡調査の結果です。
485例の若年発症認知症が認められ、10万人・年当たりの発症率は16.8人でした。
発症率は40歳から5年ごとに増加し、女性よりも男性で高率でした。
15の因子が発症と有意に関連することが分かり、最も強力な危険因子が起立性低血圧で,次いでうつ病、アルコール中毒、脳卒中と続き、遺伝要因のApoEε4ホモ保有は5番目でした。
これまで報告のない4つの新たな危険因子が同定され、それらは起立性低血圧、ビタミンD欠乏(ビタミンDは神経変性に対する保護効果が指摘されている)、CRP高値、社会的孤立でした。また中等度のアルコール摂取(飲み過ぎはダメ。適度ならOK)、より高い正規教育、身体の強さ(握力で評価)は防御的に作用していました。
UK Biobankのコホートはほぼ白人なので、そのまま日本の集団には当てはめられるか不明な点ですが、若年性認知症であっても、修正可能な危険因子があること(遺伝性ばかりではない)、生活習慣の改善が有効であることが示唆されました。
自分も中年男性なので・・注意すべき点を心に刻むとともに、認知症の予防法として、皆さんにも是非知って欲しいと思いました。 (小児科 土谷)