院長先生のブログ
3歳以上の川崎病罹患児が30年で5倍に
日本の川崎病患児を対象に、過去30年間の年齢・地域・季節性と罹患率について調査した研究(JAMA network open. 2024 Feb 05;7(2);e2355001.)を紹介します。
Age-Dependent Variations in Kawasaki Disease Incidence in Japan – PMC (nih.gov)
日本全国の川崎病を診療する病院を対象とした全国調査データを用いた横断的研究です。
1970~2020年に川崎病で入院した患児42万2,528例を対象に、2022~24年にデータを解析しました。
患児を乳児(生後6ヵ月未満)、幼児(6~24ヵ月未満)、2歳児(24~36ヵ月未満)、3歳以上児(36ヵ月以上)に層別化し、データを解析しました。
その結果、42万2,528例の患児(男児57.7%、年齢中央値23.69ヵ月)のうち、乳幼児の平均罹患率は30年間比較的安定していたが(1987~92年を1として、ピークの2011~16年は2.05)、3歳以上児は5倍超となっていたことが分かりました(1987~92年を1として、ピークの2014~19年は5.17)。一方で、3歳以上児では、2014年10月~15年6月および2018年7月~19年3月の5.71から、2016~17年の4.69と、乳幼児にはない減少がみられました(17.8%減)。
季節的サイクルは年齢層によって異なり、乳児では平均罹患数のピークは7月と8月(5.63例/10万人)で、幼児では12月と1月(4.67例/同)でした。幼児の平均罹患率は2010年代初めに大きく変化しており、10月の幼児の平均罹患率は1992~95年は0.74でしたが、2016~19年は1.10になっていました。罹患率と季節的サイクルの相関指数について、3歳以上児は14都道府県で0.78と高い値を示したが、乳幼児のでは低かった(最高で0.43)ことが分かりました。
乳児の罹患数があまり変化していない一方、3歳以上の患児は5倍以上増加していました。
3歳以上の患児には4月と6月に季節的ピークが認められるため、学校暦(行事・イベント等)と関連しているのかもしれません。3歳以上のお子さんの川崎病では、その発症に社会的要因が関与している可能性があることも頭の片隅に置いておいた方が良いのかもしれませんねw (小児科 土谷)