院長先生のブログ
マイクロプラスチック

今日は近年取りざたされている環境問題に関連して、マイクロプラスチックのお話です(N Engl J Med. 2024 Mar 7;390(10):900-910.)。
Microplastics and Nanoplastics in Atheromas and Cardiovascular Events | NEJM
イタリアからの前方視的研究です。
頸動脈の動脈硬化病変(プラーク)を外科的に切除する頸動脈内膜切除術を受けた312人のなんと150人(58%)の切除プラークからポリエチレンが検出され、プラーク1mg当たり21.7±24.5μgであったことが分かりました。31人の患者(12.1%)にはポリ塩化ビニルが検出されました。
電子顕微鏡検査ではプラークのマクロファージ中に異物が確認されました。
プラークにマイクロ/ナノプラスチック(MNPs)が検出された患者では、検出されなかった患者よりも、34ヵ月の追跡期間において一次エンドポイントイベント(心筋梗塞,脳卒中,または何らかの原因による死亡の心筋梗塞,脳卒中,または何らかの原因による死亡)の複合リスクが高いことが分かりました(ハザード比,4.53;P<0.001)。
マイクロ/ナノプラスチック(MNPs)はプラーク中の炎症反応を著しく増加させ、TNF-α,IL-6,IL-18,IL1-β,CD3,CD68のレベルやコラーゲン含量を増加させていたことが分かりました。
以上から、心血管系疾患の新たな危険因子としてMNPsへの暴露を考える必要があると考えられました。
他の臓器へのリスクがないのか?どうすれば曝露を減らすことができるのか?
環境問題だけでなく、健康問題としても、化石燃料からの脱却は不可欠なのかもしれません。
今後の重要な問題になると思われます。皆さん、どのようにお考えでしょうか? (小児科 土谷)