院長先生のブログ
幼少期の食べ物に対する関心の強さと摂食障害のリスク

幼少期の食べ物に対する関心の強さと、その子どもが10代前半になった時の摂食障害のリスクとの関連性について調べた論文( The Lancet. Child & adolescent health. 2024 Apr;8(4);270-279.)を紹介します。
4~5歳の幼児の親に対して、子どもの食欲や摂食行動に関するアンケートを実施して食欲特性を評価しました。その約10年後の子どもが12〜14歳になった時点で、自己申告により摂食障害の症状の有無を把握しました(追跡調査の時点で、対象の約10%が過食性障害の症状を報告し、その半数が一つ以上の代償行動(食事を抜いたり絶食したり、過度の運動をするなど)を報告していました)。
その結果、幼少期に食物反応性(食べ物を見つめたり、臭いを嗅いだりするなどの行動でスコア化)が高いと、成長後に過食性障害の症状〔オッズ比(OR)1.47(95%信頼区間1.26~1.72)〕や、乱れた食行動〔OR1.33(同1.21~1.46)〕、衝動的な摂食〔OR1.26(1.13~1.41)〕、摂取制限〔OR1.16(1.06~1・27)〕、および代償行動〔OR1.18(1.08~1.30)〕が多いことが明らかになりました。また、幼少期に衝動的な摂食をする傾向があると、成長後に代償行動が多いことも分かりました〔OR1.18(1.06~1.33)〕。
対照的に、幼少期に食後の満腹感が高いことは、成長後の代償行動〔OR0.89(0.81~0.99)〕や乱れた食行動〔OR0.86(0.78~0.95)〕のオッズ比低下と関連していました。また、幼少期に食べる速度が遅いことが、成長後の代償行動〔OR0.91(0.84~0.99)〕や摂取制限〔OR0.90(0.83~0.98)〕が少ないことと関連していました。
以上から、(因果関係を証明することはできませんが)幼少期の食物反応性は思春期に摂食障害を発症しやすくなる素因の一つである可能性があるみたいです。
親が子どもたちに対して、健康的な食事環境を提供し、適切な食事を与えることで、摂食障害を予防する手段になるかもしれません。そして、食事の時間を規則正しくすること、および、子どもにプレッシャーをかけることなく、何をどれくらい食べるか、子どもたち自身が決められるようにすることも重要ですねw (小児科 土谷)