院長先生のブログ
おおきな木
小児科なんで、たまには絵本を紹介します。
有名な本なんで、ご存じの方も多いかもしれません。
『おおきな木』 シェル シルヴァスタイン
あるところに、一本の木がありました。
その木は、一人の少年のことが大好きでした。
少年はその木のところにやって来て、色々と遊びました。
時が流れ少年は大きくなり、木は一人ぼっちになることが多くなります。
ある時、ふいにやって来て、「買い物したいからお金ちょうだい」とせがむ少年に、木は、「りんごを持っていきなさい それを町でお売りなさい」。
少年は、木に実ってるりんごをすべて持っていってしまう。
木はそれで幸せになりました。
さらに大きくなった少年はしばらくやって来ない。
ある時、ふいにやって来た大人になった少年は・・・
さらに長い長い時がたち、
ある時、ふいにやって来た老人になった少年は・・・
実は、訳者さんによって印象が変わる「おおきな木」。
いろいろな感じ方のできる不思議な絵本なんです。
村上春樹訳と本田錦一郎訳を比較してみると・・・
ぼうや(少年)の呼び名が異なりますw
木は最後まで「ぼうや」と呼んでいますが、呼びかけ以外のところの表現は、本田錦一郎訳では「ぼうや→そのこ→おとこ」で、村上春樹訳では、最初から老人になるまで「少年」です。
主人公はいわゆるダメ男なんですが、村上さんの場合は「いつまでたっても、ぼうやは成長しないんだな」という揶揄が伝わってきますねw
そして、随所にでてくる
本田訳の「きは それで うれしかった」
村上訳の「木はしあわせでした」
似ているようで少し違う「うれしい」と「しあわせ」。
このふたつの違いは、物語の雰囲気を表しています。
ストレートで分かりやすい「うれしい」。
少し奥深さを感じる「しあわせ」。
何となく、子ども向けには本田さんの訳本、大人向けには村上さんの訳本かな?と感じました。
いろいろな解釈ができるので、子どもから大人まで楽しめる作品です。
まだご覧になっていない方は、お暇なときに是非どうぞ。 (小児科 土谷)