小児の予防接種率が低下した場合に、流行を根絶した感染症(麻疹、風疹、ポリオ、ジフテリア)が旅行者によって持ち込まれて再流行する可能性があるみたいです(JAMA. 2025 Jun 24;333(24):2176-2187. doi: 10.1001/jama.2025.6495.)。

Modeling Reemergence of Vaccine-Eliminated Infectious Diseases Under Declining Vaccination in the US | Infectious Diseases | JAMA | JAMA Network

 

米国の50州とコロンビア特別区における、ワクチンで予防可能な感染症の輸入と動的拡散について、シミュレーションモデルを用いて評価しました。このモデルは、人口動態、集団免疫、感染症の輸入リスクに関する地域特異的な推定値をパラメーター化しており、ワクチン接種率が異なる場合の、25年間のシナリオについて検討しました。

現在の接種率は2004~23年の平均値とし、そこから各州の小児の予防接種率が減少した場合(定期接種が中止された場合を相対リスク100%減少と設定)、5~10%増加した場合の影響を予測しました。主要評価項目は、麻疹、風疹、ポリオ、ジフテリアの絶対累積症例数の推定値とし、副次評価項目は感染症関連合併症(麻疹後の神経系合併症、先天性風疹症候群、麻痺型ポリオ、入院、死亡)の推定発症率と、流行地域レベルとなるエンデミックが発生する確率と時期に設定されました。

 

2024年の各州の予防接種率は、麻疹/ムンプス/風疹(MMR)が88~96%、ジフテリア(ジフテリア/破傷風/百日咳の3種混合ワクチン)が78~91%、不活化ポリオウイルスワクチンが90~97%でした。

現在の予防接種率を維持するシナリオでは、25年間に麻疹が85万1300人(95%不確定区間38万1300-130万)、風疹が190人(154-230)、ポリオが18人(3-61)、ジフテリアが8人(1-22)に発生し、麻疹後の神経系合併症は851人(372-1270)、あらゆる感染症による入院は17万200人(7万6200-25万)、あらゆる感染症による死亡は2550人(1130-3760)に発生すると予測されました。

州レベルのMMRワクチンの接種率が5%増えた状態が続くシナリオでは、25年間の麻疹発症者は5800人(3100-1万9400)に減り、10%上昇すると2700人(2200-3400)になると予想されました。対照的に、接種率が10%低下した場合には、麻疹発症者が1110万人(1010万-1210万)に増えると推定されました。

現在の予防接種率が続くシナリオでは、2000回のシミュレーションの83.1%で、麻疹のエンデミックが再来すると予測され、そのタイミングは20.9年(95%不確定区間17.4-24.6)後になることが示唆されましたが、それ以外の3種類は再びエンデミック化することはないと予想されました。

しかし、予防接種率が50%低下した場合、麻疹は4.9年(4.3-5.6)、風疹は18.1年(17.0-19.6)でエンデミックになると予測され、ポリオは2000回のシミュレーションの56%が、エンデミックになるまでに推定19.6年(14.0-24.7)かかることを示しました。ジフテリアは、シミュレーションの0.8%で20年超経過後にエンデミックになる可能性が示唆されました。

 

以上から、小児の予防接種率の低下は麻疹、風疹、ポリオ、ジフテリアのアウトブレイクの頻度を高め、最終的にはエンデミック化を誘導することが示唆されました。

 

小児への予防接種は、お子さんだけでなく、社会を守る観点からも、とても大事です。

是非、接種漏れの無いようお願いいたします。 (小児科 土谷)