院長先生のブログ
COVID-19 MIS-C④
小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory Syndrome in Children : MIS-C)の皮膚粘膜症状/徴候についてのレポート(JAMA Dermatol. 2021 Feb 1;157(2):207-212. )を紹介します。
2020年の4月1日~7月14日までにニューヨーク市の2病院に入院しMIS-Cと診断された患者を対象とした後ろ向き研究で、診断基準はCDCの基準が用いられています。
対象となったのは35人で、そのうち25人の児がMIS-Cの基準を満たし、10人はSARS-CoV-2の感染を示す検査所見はないがMIS-Cの可能性がある症例(probable MIS-C case)として研究に含まれました。それぞれの年齢の中央値は3歳(範囲: 0.7-17歳)と1.7歳(範囲, 0.2-15歳)でした。
その結果、全体のうち29人(83%)に皮膚粘膜所見がみられました(主に以下の所見)。
・結膜充血: 21人(60%)
・手足の紅斑: 18人(51%)
・口唇充血: 17人(49%)
・口唇のひび割れ: 13人(37%)
・眼周囲の紅斑と浮腫: 7人(20%)
・いちご舌: 8人(23%)
・頬部の紅斑: 6人(17%)
皮膚粘膜症状は発熱が先行した症例(19/29)では発熱してから平均2.7日後に発現していましたが、皮膚粘膜症状が発熱に先行した症例も存在しました。また、この研究では34人が外来で経過観察されていましたが、 そのうち9人で膜様落屑が認められました。皮膚粘膜症候は3歳未満と3歳以上で明らかな違いは認められず、皮膚粘膜症候の有無により臨床的な重症度に違いは認められませんでした。
この研究では、SARS-CoV-2感染を示す所見がない「MIS-Cの可能性がある症例」が含まれています。
この中には従来の「川崎病」がそれなりに含まれている可能性があるため、結果を鵜呑みにはできませんが、MIS-Cには多彩な皮膚粘膜症候がみられる可能性があること、どのような所見がみられやすいかという点で勉強になりました。 (小児科 土谷)