メニュー

   

お電話

見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

乳児期のRSV感染症には小児喘息発症に関連する

乳児期のRSV感染と小児喘息発症に関連性があるか調べた論文( Lancet. 2023 May 20;401(10389);1669-1680.)を紹介します。

Respiratory syncytial virus infection during infancy and asthma during childhood in the USA (INSPIRE): a population-based, prospective birth cohort study – The Lancet

 

INSPIRE試験は2012年6月~12月または2013年6月~12月に正期産で生まれた非低出生体重の健常児を対象とした大規模な住民ベースの出生コホート研究で、米国テネシー州中部地域の11の小児科診療所で参加者を募集しました。乳児期のRSV感染状況(感染なし・感染あり)を、受動的サーベイランスと能動的サーベイランスを併用して調査し、分子生物学的手法と血清学的手法によりウイルスを同定しました。主要アウトカム(5歳時点の喘息)を前向きにフォローアップし、5年間のフォローアップを完了したすべての子供について解析を行いました。

 

その結果、1,946例(年齢中央値55日[四分位範囲[IQR]:16~78]、女児48%)が登録され、このうち1,741例(89%)で生後1年目のRSV感染状況のデータが得られました。乳児期に944例(54%)がRSVに感染し、797例は感染しませんでした。

 

5歳時点で喘息を発症していた小児の割合は、RSV感染群が21%(139/670例)であったのに対し、RSV未感染群は16%(91/587例)と有意に低かった(p=0.016)ことが分かりました。補正後リスク比は0.74(95%信頼区間[CI]:0.58~0.94、p=0.014)で、乳児期のRSV感染を回避することによって予防可能な5歳時点の小児喘息の割合は15%(95%CI:2.2~26.8)と推定されました。

 

また、小児の年齢で層別化したモデルでは、喘鳴の年間再発リスクは、1~4歳のいずれの時点においても、RSV感染群に比べRSV未感染群で低かったものの、有意差は1歳時(p<0.0001)と2歳時(p=0.043)でのみ認められました。

 

アトピー型喘息を、5歳時の喘息と3歳時の空中アレルゲン感作で定義した場合、5歳時の非アトピー型喘息の頻度はRSV感染群に比べRSV未感染群で有意に低かった(p=0.010)ものの、アトピー型喘息との関連は認められませんでした(アトピー型喘息を、5歳までに医師によりアレルギー性鼻炎またはアトピー性皮膚炎と診断され、親によって申告されたものと定義しても、同様でした)。

 

以上から、正期産の健常児で、乳児期にRSウイルス(RSV)に感染していない場合は、5歳時点の小児喘息の発生割合が大幅に低く、乳児期のRSV感染と小児喘息には年齢依存的な関連があることが分かりました。

高齢者用のRSVワクチンが開発され、導入されたことを考えると、早く小児にも導入して欲しいな~っと思ってしまう今日この頃です。喘息発症の観点だけでなく、1歳未満の乳児はRSVに罹患すると結構重症化しますんで。。 (小児科 土谷)

この記事をシェアする