片頭痛によって生じる医療費は比較的少額ですが、生産性の低下による経済的影響は大きいものと思われます。今回、片頭痛の経済的負担について、政府のコストの観点から検討を行った論文（Journal of health economics and outcomes research. 2023;10(2);72-81.）を見つけたので紹介します。

The Hidden Economic Consequences of Migraine to the UK Government: Burden-of-Disease Analysis Using a Fiscal Framework – PMC (nih.gov)

片頭痛の経済的負担は、政府コストの観点を適用した分析財政モデリングのフレームワークを用いて、英国一般人口と比較・推定しました。就労に対する片頭痛の影響に関する公表された測定値は、一般人口の経済活動率/非活動率を用いました。本モデルでは、ライフコースにわたる雇用からの収入、負担した直接税および間接税、財政的支援の生涯にわたる変化を推定しました。

片頭痛の影響を受ける人とそうでない人における差異は、純財政上の影響としての公的会計に、財政コストは、20年にわたる英国の年間コホート全体の1人当たりの割引平均として報告されています。

その結果、片頭痛の影響を受けている人は、欠勤、失業、障害者、早期退職となる可能性が高かったことが分かりました。

44歳の片頭痛患者は、非片頭痛患者と比較して英国政府に対し1万9,823ポンドの過剰な財政コストをもたらし、片頭痛を抱えながらの生活は年間1,379ポンド相当の影響を及ぼしていることが推定されました。

また、片頭痛は公共の経済に対し年間122憶ポンドの影響を及ぼしており、これは片頭痛1件当たり約130.63ポンドであると推定されました。本モデルでは、医療および社会福祉労働者の年間生産性損失を20億5,000万ポンド、年間生産性損失の合計は58憶1,000万ポンドを超えると推定しました。

以上から、片頭痛は就労などの面で患者のQOLを下げるだけでなく、税収の損失/支出の観点からも英国政府のコストに大きな影響を与えていることが明らかとなりました。

僕も頭痛持ちなので、頭痛で行動不能になった時の辛さは身に染みて分かります。

世間の皆さんにも、この辛さを少しでも分かって欲しいな～　（小児科　土谷）