早いもので、今年も来月からインフルエンザワクチン接種が始まります。

そこで今回は、高齢者に対するインフルエンザワクチン接種が心血管イベントに及ぼす影響について調べた研究(EClinicalMedicine. 2025 Aug 21:87:103449. doi: 10.1016/j.eclinm.2025.103449. eCollection 2025 Sep.)を紹介します。

Estimating cardiovascular effects of influenza vaccination in older adults: a target trial emulation using proximal causal inference – PMC

 

対象は、Yinzhou Regional Health Care Databaseに登録されていた浙江省寧波市ぎん州区在住で転居歴のない65歳以上の人で、ぎん州区では2020年は70歳以上、2021年以降は65歳以上の高齢者は無料でインフルエンザワクチンを接種できました。そこで、2020年9月から12月まで、2021年9月から12月まで、2022年9月から12月までをそれぞれ、個々の臨床試験の登録期間とみなし、参加者をインフルエンザワクチンの接種者と未接種者に区分しました。これにより50件の試験を模倣する分析を行うことができました。主な評価項目を登録から1年後までのMACE(虚血性脳卒中、頭蓋内出血、心筋梗塞、心不全)と急性冠症候群(ACS)とし、測定可能な交絡因子と測定不可能な交絡因子の両方を考慮するため、因果推論アプローチと併せて傾向スコアマッチングを実施し、発生率比(IRR)を推定しました。

 

その結果、計818万1638人が登録されました(複数回登録された参加者がいたため、実際の参加人数は21万4173人)。818万1638人のうちの17万11人がワクチン接種者で、801万1627人は非接種者でした。接種者は一般に、フレイル度が高く(重度の割合は接種者が19.1%、非接種者は14.7%)、高血圧の有病率も高かった(83.0%と74.9%)ことが分かりました。傾向スコアマッチング後の16万9988ペアでは、すべての特性のバランスは良好で、それらを33万567.2人・年追跡しました。

 

MACEは1万5931人に発生し、1000人・年当たりの発生率は、接種群が47.1(95%信頼区間46.1-48.2)、非接種群は49.2(48.2-50.3)でした。非接種群に比べ接種群のMACEの調整IRRは0.86(0.83-0.89)でした。ACSは4409人に発生し、1000人・年当たりの発生率は、接種群が26.4(25.6-27.1)、非接種群が26.3(25.6-27.1)で、調整IRRは0.87(0.83-0.91)と有意差を示しました。登録年度、年齢、性別、現在の喫煙状況、高血圧、脂質異常症、前年のインフルエンザワクチン接種歴で人々を層別化し、分析しても結果はほぼ同様で、感度解析でも一貫した結果が得られました。

 

以上から、インフルエンザワクチン接種は高齢者におけるMACEとACSの発症率の低下と関連していたことが分かりました。

 

当院では、子どもだけでなく、成人・高齢者と幅広い年代の方にインフルエンザワクチン接種を実施しています。

今年も昨年同様に接種をする予定ですので、ご希望の方はお早めにご予約下さい。 (小児科 土谷)