院長先生のブログ
家庭内で起こる事故を防ぐ 転落事故②
ベランダや窓からの転落事故に対する予防策について触れる前に、「子どもがよじ登る能力」について触れてみたいと思います。
子どものよじ登る能力
これに関して、NPO法人 Safe Kids Japanが実施した「ベランダの柵を考えるプロジェクト報告書.2022」を基に紹介します。
veranda_220520 (safekidsjapan.org)
建築基準法で定められている高さ110cmを超えた120-140cmの柵を作成し、3,4,5歳児を対象として、よじ登ることが出来るかの調査を保育所の協力を得て実施しています。
よじ登り力に関する結果から、120cmといった高い柵にしても、よじ登ろうという意図がある場合には、足がかりの無い平板な構造であっても、65%の子どもが登れることが分かりました。また、柵を130cmや140cmと高くする工夫は、4歳まではある程度の効果が認められたものの、5歳児にはあまり効果がないことが確認できました。これらの結果から、6歳未満の幼児がベランダに出た場合、例え足がかりが無くても転落事故が起こる危険性が高くなることが分かりました。
足がかりに関する実験では、厚さ1cm程度、0~45°の角度の出っ張りがあれば、足がかりとして機能することが分かりました(かなり小さなものでも足がかりとして機能する)。
ベランダの柵を登る時間は、4歳児:11秒、5歳児:7秒程度で、極めて短時間で登ることが出来ることが分かりました。
以上から、子どもの「よじ登る能力」は極めて高いことが分かりました。登りにくくする工夫だけでなく、ベランダへのアクセスを制限する工夫も大切です。 (小児科 土谷)