院長先生のブログ
子どもとピロリ菌
1979年にロビン・ウォーレン博士が胃の中に未知の細菌を発見した後、バリー・マーシャル博士(消化器病医)とともに研究を重ねた結果、1982年4月14日に未知なる細菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)の分離培養に成功しました。
胃炎や胃十二指腸潰瘍などの治療の道筋となったことから、日本プロバイオティクス学会が「ピロリ菌検査の日」と定めています(人間ドックなどを受けた際に、ピロリ菌感染を指摘された方もいるのではないでしょうか?)。
このピロリ菌、子どもには無関係かというと、実はそうでもありません。勤務医時代のケースをいくつか紹介します。
自験例①:7歳の男児。吐血のため近医を受診し、マロリーワイス症候群を疑われて紹介受診。
自験例②:14歳の女児。1年前の学校健診で鉄欠乏性貧血を指摘され、鉄剤投与で外来加療中だったが、鉄剤を中止すると再発するため精査目的に上部消化管内視鏡検査を実施した。
いずれも、ヘリコバクター・ピロリ陽性で、除菌により軽快しました。
このように、子どもにとってもヘリコバクター・ピロリ感染は決して稀なものではなく、現在の小児・青年期のヘリコバクター・ピロリ感染率は2~5%と考えられています。
大人だけでなく、子どもにとっても厄介なピロリ菌。上腹部痛が長引いたとき、その鑑別のひとつに頭の片隅に置いておくと良いと思います。 (小児科 土谷)