メニュー

   

お電話

見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

血液型を知りたくて、検査をしたいのですが?

見学会の時に、保護者の方から直接質問があった「子どもの血液型に関する検査」についてです。

土曜日のようなイベントの有無に限らず、学校が始まる春のこの時期は、「血液型に関する検査」に関する質問や検査依頼が増えます。今日はこれに関して簡単に説明します。

現在、輸血の可能性がない状況では、『血液型を知っておく』ために行なう検査は一般的に保険診療で実施されていません(保険は効かず、自費検査になります)。「突然の事故などに遭遇した時に、自分やお子さんの血液型を予め知っておかないと心配だ」という保護者の方々も多くいらっしゃいますが、そのような状況下で搬送された医療機関では、緊急輸血の際でも必ず血液型を検査で確認し、輸血をして問題がないか確認してから輸血を行っています。患者さんの自己申告を基に輸血することはありません。そのため、血液型を検査しなくなったのです。

これ以外の理由で、新生児や小さな子どもの時に血液型検査を実施しない理由は、検査結果が不正確になりやすいことが挙げられます。

この話を進める前に、血液型の検査の概略について知っておきましょう。


ABO血液型について

血液型で有名なものはABO血液型です。ABO血液型検査には、赤血球と血漿(血液液体の部分)が使われますが、ABO血液型を知るためには、基本的にオモテ試験とウラ試験の2つの検査をペアで行います(赤血球がオモテ試験に、血清の成分である免疫グロブリンがウラ試験に使われます)。このふたつの試験(検査)を照合して「血液型」が確定します。例えば、赤血球側の検査であるオモテ試験は赤血球膜上のA抗原、B抗原を検査するもので、たとえばA抗原だけ検出されるとA型と判定されます。一方、血漿側のウラ試験は、抗A抗体、抗B抗体を検査するもので、たとえばA型の人は抗B抗体のみ検出されます。このようにABO血液型では規則的に抗原、抗体を持っていることから、血液型の決定に際して、赤血球側(オモテ検査)と血漿側(ウラ検査)をペアで行うことが必要なのです。

ここで話を元に戻しますが、我々がお子さんの小さいときに血液型の検査を勧めない理由は、オモテ試験とウラ試験が一致しないことがあるためです。オモテ試験とウラ試験の一致率は、生後4ヶ月未満で56.6%、生後4ヶ月から1歳で76.5%、1歳を超えて92.2%、2歳で97.6%となっています(日本輸血細胞治療学会誌 2020; 66:613-8.)。この理由として、生後4カ月未満の子どもに対してのウラ試験は、母親からの移行抗体の影響や、血清中の免疫グロブリン(抗A抗体や抗B抗体と呼びます)の産生機能が低いことが指摘されています(輸血療法の実施に関する指針〔改訂版〕より抜粋)。


よく「赤ちゃんの時に検査した血液型が、大人になったら変わる」と世間で言われていたりするのは、新生児の際に赤血球側検査(オモテ検査)だけ行われた場合に、赤血球膜上のA抗原、B抗原が弱いために、A型やB型の方がO型と判定される場合があるためで、本当に血液型が変わってしまう訳ではありません(生まれてから血液型が変わることは骨髄移植など特殊な状況をのぞき、ありません)。

この他にも理由は色々ありますが、子どもが小さいときの血液型の検査は実施しにくいのだということだけでも分かって頂ければと思います。

 

では、いつ血液型を検査すれば良いのでしょうか?

新生児において赤血球膜上のA抗原、B抗原の強さは、新生児では成人の3分の1程度で、2~4歳になって成人並みになると言われています。生後6か月は血液型の抗体が産生され始める時期、1歳は全ての児に抗体が産生される時期、3歳は赤血球膜上のA抗原、B抗原の強さが成人になる時期です。従って、正確な血液型の判定を求めるのならば、4歳以上が望ましく、できれば小学生になる頃に血液検査を受ければよいと思われます。そもそも、健康な生活を送る上で必須な検査という訳ではありませんし、わざわざ痛い思いをして検査を実施しても、後日再検査が必要になるのでは、大人でもたまったものではありませんw

 

そうはいっても、海外留学や保育園・幼稚園への入園に際して等、書類上の手続きで血液型検査を実施しなければならない場合があります。いわゆる「大人の事情」です。そんなときは、勿論、当院で血液型検査は可能ですので、外来で血液型検査希望とお伝え下さい!(小児科 土谷)

この記事をシェアする