院長先生のブログ
long COVID患者では、若年者の認知機能障害が最も顕著で、不均一である

long COVIDには様々な症状があることが知られています。今日はその中でも認知機能障害についてです。
COVID-19後遺症患者における種々の認知領域を検討した研究を紹介します(Sci Rep 13, 6378 (2023).(doi.org/10.1038/s41598-023-32939-0))
対象は26歳~64歳(平均47.48歳)の214名(女性85%)で、処理速度、注意、遂行機能、言語モダリティをオンラインで調査しました。年齢によって3群(26-39歳;29名,40-49歳;97名,50-64歳;88名)に分類し、年齢による影響も検討しました。
その結果、少なくとも85%の患者で、1つの神経心理学的検査で認知機能障害が認められました。
注意と遂行機能は重度の障害を持つ者で頻度が高かった
注意障害は患者の年齢に関係なく、各群の25%以上が中程度の障害を示した
処理速度や言語記憶の障害は若年群は高齢群に比べてかなり不良であった
予想に反して、ほぼ全てのタスクにおいて、年齢が上がるほど障害が軽くなった:高齢群は注意とスピード処理に軽度の障害があるのみで、認知機能は比較的保たれていた。一方、若年群は最も顕著で、不均一な認知機能障害が認められた
考察の中で、著者らは「加齢は免疫系を弱めるため、自己免疫反応が弱くなる」ことが要因ではないかとしています。この結果はlong COVIDの自己免疫仮説を支持する結果と言えるのでしょう(他にもいろいろ説はありますが)。
オミクロン株になって以降、呼吸器感染症というより神経感染症としての側面(後遺症含む)が最近注目されています。罹患すると厄介な感染症であることは5類に移行した後も変わりません。ワクチン接種や日常での必要最低限の感染対策を継続しつつ、このウイルスと上手く共存する道を探るしかないのでしょうね。 (小児科 土谷)