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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

「本は紙に限る」は正しいのか?

最近は電子書籍で文献を漁ることが多いのですが、集中できずしっくりこないので、最終的に印刷して読んでしまうこともしばしばです。

この感覚は昭和の人間特有なのかと思っていましたが、そういうんじゃないみたいです。

 

2022年に昭和大学から発表された論文をざっくり紹介します(Sci Rep. 2022 Jan 31;12(1):1589. doi: 10.1038/s41598-022-05605-0.)。34人の健康な大学生を対象に、スマホか紙で小説を読んでもらい、読了後の「小説に関する質問への正答率」で読解力に差が見られるかどうかを調べています。

その結果、「スマホ読書は紙で読むよりも読解力が低くなる」ことが分かりました(上図)。

 

では、スマホ読書の何が読解力を低くしているのでしょうか?

読書中の脳活動を光トポグラフィーで調べたところ、スマホ読書では、紙の読書と比べて、脳の前頭部(前頭前野)が過剰に活性化した状態になっていることがわかりました(下図)。

過去の論文(Neurology 90,e977-e984.)では脳が過剰に活動している状況では読解力が低下しやすいことが示されており、本結果もそれに矛盾しないものでした。

 

また、ため息(sigh)には脳の認知機能にポジティブな影響を与えることが知られていますが、紙の読書ではため息の回数が平均3.3回であったのに対して、スマホ読書では平均1.8回で、スマホ読書では深い呼吸が抑制されており、読解力の低下の一因になっていると考えられました(下図)。

以上から、筆者らはスマホ読書では、スマホのスクリーンが発するブルーライトなどの影響で注意力が強制的に高まり、深い呼吸が減少。そして、脳に大きな負担がかかり前頭前野が過剰に活性化した結果、読解力が低下したのではないかと推察しています。

 

この論文から、スマホ読書は読解力を低下させる可能性があることが分かりました。電子書籍などをスマホで読む場合は、適度に休憩をはさみ、意識的に深呼吸すると良いのかもしれません。 (小児科 土谷)

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