院長先生のブログ
抗ウイルス薬のエンシトレルビル(ゾコーバ)はlong COVIDを改善するかもしれない
日本もすでにかなりの数の人が新型コロナに感染していると推定されていますが、これから問題となると思われるコロナ後遺症の予防法や治療法は確立されていないという点が大きな課題です。
コロナ後遺症にならないためには、現時点でどんな方法があるのでしょうか? 以前、long COVIDに対するワクチン接種について触れたと思うので、今回は抗ウイルス薬の効果について述べます。
Nature誌のNewsに、2月21日に開催されたレトロウイルスと日和見感染症に関する会議(CROI 2023;シアトル)で発表された経口抗ウイルス薬エンシトレルビル(ゾコーバ)について紹介されています(Nature News, 03 March 2023(https://www.nature.com/articles/d41586-023-00548-6))。
英語が苦手だな~という方は塩野義製薬のCROI 2023 フォローアップミーティング資料がWEBで読むことが出来るので、参照してください。
軽~中等度のCOVID-19患者において、感染可能なSARS-CoV-2ウイルスが検出されなくなるまでの期間を29時間短縮することがPh2/3試験(SCORPIO-SR)の第3相解析で示されています(SARS-CoV-2陽性期間を短縮できた薬剤としてはエンシトレルビルが最初)。
更に、当初予定のなかった付加的解析で、投与開始時の症状スコアが中央値以上の集団において、発症3日以内のエンシトレルビル(125mg)内服はCOVID-19に特徴的な咳や喉の痛み、倦怠感、味覚・嗅覚異常など14症状のいずれかの長期持続を認める患者の割合を、偽薬群と比較して有意に減少させた(14.5% vs 26.3%;45%の相対リスク低下;p<0.05)ことも分かりました。
以上より、抗ウイルス薬(エンシトレルビル)投与がlong COVIDを改善する可能性が示されました。研究を計画した時点で予定された評価項目ではなかったことから、科学的根拠としては十分とは言えませんが、残存ウイルスがlong COVIDの原因であり、抗ウイルス剤がlong COVIDを予防するという仮説を支持する結果でした。
エンシトレルビルは重症化リスクのない人にも処方できる抗ウイルス薬であるため、この薬がコロナ後遺症に有効であることが将来きちんと示されれば、コロナ後遺症問題を解決する大きな武器になると思われます。今後に期待しましょう! (小児科 土谷)