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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

HPVワクチンの安全性(国内編)

今回はHPVワクチンの安全性に関する国内での評価についてです。

2013年6月の積極的勧奨差し控えの決定以降、日本国内では2つの安全性調査が実施されました。

 

≪厚生労働省指定研究班(祖父江班)の実施した全国疫学調査≫

論文(J Epidemiol. 2022 Jan 5;32(1):34-43. doi: 10.2188/jea.JE20210277. Epub 2021 Oct 30.)にもなっているので、ご興味のある方は読んでみましょう。青少年における疼痛または運動障害を中心とする多彩な症状の発現頻度並びに関連因子の評価を目的として行われた疫学調査で、全国18,302診療科を対象としたアンケート調査を行っています。

一次調査

2015/7/1~2015/12/31の間に、①年齢12~18歳、②疼痛及び感覚の障害、運動障害、自律神経症状、認知機能障害のうち、1つ以上認められる、③②の症状が3か月以上持続している、④②及び③のため通学や就労に影響がある、の①~④の調査対象症例基準を全て満たした患者がいたかを調査しています。

二次調査

一次調査で該当する患者が受診した508の診療科に、該当患者について個人票を用いて情報収集を実施しています。

結果と結論

この調査では、接種と症状出現の時間的関係が不明な症例が多く、接種歴の有無での年齢の偏りが大きく年齢調整が出来なかったため、因果関係に踏み込んだ解析が出来ない調査の限界が存在していました。そのため結論は「HPVワクチンの接種歴がない者においても、接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈する者が一定数存在した」とまとめられています。

 

≪名古屋市が実施したアンケート調査(いわゆる名古屋スタディ)≫

名古屋市がHPVワクチンの被害を訴える団体等の要請をうけて実施した調査(Papillomavirus Res
. 2018 Jun;5:96-103. doi: 10.1016/j.pvr.2018.02.002. Epub 2018 Feb 23.)で、被害者団体の意見を踏まえた調査項目が作成され、24の症状について、接種者が非接種者に比べてどのくらい症状を訴える危険度が高いか(オッズ比)を検証しています。

その結果、24の全ての症状において、ワクチン接種後に発症が増加したものはありませんでした。接種者に多く認められた持続症状は月経量の異常のみで、接種者に特別多く見られる持続症状はありませんでした

 

海外での報告同様、現時点で日本国内においてもHPVワクチンの安全性を否定するものはありません。ワクチンの安全性を正しく理解し、不安を少しでも払拭して頂けたら幸いです。 (小児科 土谷)

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