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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

心臓振盪

夏は野球やサッカーなど、スポーツが盛んになる時期です。

そこで今回はスポーツに関連して学校で起こり得る事故「心臓振盪(Commotio cordis)」について簡単に説明します。

 

心臓振盪は胸に受けた衝撃が原因で不整脈(心室細動)を起こす現象(下図:N Engl J Med 2003; 349:1064-1075より抜粋)で、健常な小児でもスポーツや日常生活の中で起こり得る心臓突然死の原因となる疾患です。スポーツでは野球やサッカー、ホッケーなどを行っている最中に、ボールが胸に当たって引き起こされることが多く、なかでも野球による発生事例が多くなっています。(打ったボールが直接胸に当たった、素振りのバットが胸に当たった、キャッチボールのボールが当たったなど、発生状況は様々です。

球技以外にも、空手の突きが胸にはいって起こったケースや、兄弟げんかの小突き合い、夫婦げんかの仲裁に入った子どもの胸に親の肘が当たって起きた不幸なケースもあります。

 

心臓振盪は心臓の直上に、あるタイミングで衝撃が加わると発生するとされており、心臓震盪が発生するためには、「衝撃が当たる場所」、「強さ」、「タイミング」の3要素が必要であるとされています。

衝撃が当たる場所は心臓の真上です。胸でも心臓以外の場所では起こりません。強さは弱すぎても、強すぎても起こらないと言われています(球速が時速65kmまでは速度が速いほど心臓振盪が起こりやすく、時速80km以上になると起こりにくいとされています。14歳頃に多く、18歳以上に少ないのはこのため)。ボールの硬さ(硬い方が誘発されやすい)や受ける側の胸の骨の硬さなど、さまざまな条件があるので一概にはいえませんが、胸郭が軟らかい小児であれば軽い衝撃でも起こり得ます。

 

衝撃を受けるタイミングは、心臓震盪が起きる上で重要な要素となります。それは、心臓震盪は特定のタイミングで衝撃を受けたときにのみ起こるからです。心臓震盪は、心電図で一番大きく鋭い振幅(QRS 波)のあとのT 波の頂点よりも10~ 30msec 手前の20msec 間のタイミング(受攻期)に衝撃が加わったときに起こり、心室細動が誘発されます。確率的には、脈拍を60/ 分と仮定すると、1拍が1秒(1000msec)ですから、20msec の確率は2%となります。心臓震盪はそのわずかなタイミングに衝撃を受けたときに起こります。つまり、この2%の確率に加えて、「当たる場所」、「強さ」の条件が合致したときに起こるため、滅多に起こるものではありません。

これまでに述べた発生メカニズムを考えると、心臓振盪はある程度予防可能な病態だということが分かると思います。硬球で野球をしない、野球用パッドやチェストガードの着用、取りそこなったボールを胸に当てて止める指導を行わないなど、明日からでも出来る予防策から始めましょう!

 

そして、心臓振盪に対する唯一の治療は電気ショックによる除細動です。学校で発生してしまった場合はAEDを使用することになります。心臓振盪による心室細動が発生してから10分経過するとほぼ救命することは不可能です。迅速かつ安全に、AEDを使用しましょう! (小児科 土谷)

 

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