院長先生のブログ
セーヌ川の少女
昨日、救命講習(BLSなど)で使用するマネキンについて少し触れましたが、講習会で使用するマネキンの由来をご存じですか?
20世紀初頭にパリのセーヌ川で少女の遺体が引き上げられました。危害を加えられた痕跡もなく、自ら命を絶ったものでした。少女の身元が確認出来ず、当時の慣習によりデスマスクが製作されましたが、その少女の美しさとうっすらと浮かべた微笑(当時は溺死したモナリザと呼ばれていました)が彼女の死に謎を残すこととなり、様々な憶測がなされてロマンティックな物語が出版され、彼女のデスマスクとその物語はヨーロッパ中に広がりました。
その後、時を経て、口対口の人工呼吸法を効果的に教えるためのトレーニングマネキンを開発しはじめ
たアスムンド・ レールダルによって、この「セーヌ川の少女」は再び脚光を浴びることとなりました。レールダルはこの少女の早すぎる死に胸を痛め、この悲劇がくりかえされないようにと、心肺蘇生訓練用マネキンに少女のデスマスクを採用し、「レサシアン」と名づけたのです。
「セーヌ川の少女」から生まれたレサシアンは、1960年以降数多くの心肺蘇生法の講習会で使用さ
れており、彼女のマスクは「史上最もキスされた唇(The Most-Kissed Lips in All of History)」とも呼ばれています。近代蘇生の救命テクニックを学ぶ人々、救われた人々の「生命のシンボル」的存在ですね!
ちなみに、マイケル・ジャクソンの「Smooth Criminal」の歌詞「Annie, are you OK?」は、レスキュー・アン(CPRアニー)に話しかける救命練習の言葉が由来なんだそうな。。彼女も死後こんな数奇な運命を辿るとは夢にも思っていなかったことでしょう。 (小児科 土谷)