院長先生のブログ
COVID-19 小児編⑨
COVID-19に罹患すると糖尿病の発症リスクも高くなることは既に分かっています。
その機序として、①インスリンを作るすい臓のβ細胞にウイルスを結合するACE2が発現していてウイルスが感染する可能性があること、②ウイルス感染によりβ細胞からのインスリン分泌が低下し、β細胞が死ぬ(アポトーシスを起こす)こと、③炎症によって全身的にインスリン抵抗性が生じることなどが考えられています。
この糖尿病の発症リスク増加は、成人だけではなく、小児にも見られることも分かっており、それに関連した論文(JAMA Netw Open. 2022 Sep 1;5(9):e2233014. )を紹介します。
アメリカを含む15ヵ国で電子記録を利用して調査しており、調査群は約109万人、対照群は約31万人(白人が53.9%)です。
その結果、1型糖尿病の発症リスクを新型コロナ感染と他の呼吸器感染の場合と比較した場合のハザード比(年齢別)は、0~18才の全年齢で1.83~2.10倍高いことが分かりました(この傾向は0~9才、10~18才と年齢を分けても変わらない)。
人種間の調査は必要ですが、少なくとも白人を主体とする集団では小児の1型糖尿病発症リスクは、新型コロナ感染によって約2倍高くなることが分かりました。
アジアの集団でもそうなのか?今後の報告が待たれますね。 (小児科 土谷)