急性期の神経合併症が生じる機序のうち「2）血管への感染」を紹介します（Nat Neurosci. Nov 30, 2020（doi.org/10.1038/s41593-020-00758-5））。

病理学的にSARS-CoV-2ウイルスが嗅粘膜の神経-粘膜界面を通過し、軸索輸送を介して血管内皮細胞、神経組織（嗅神経や感覚神経終末を含む）、さらに延髄の呼吸・心血管中枢を含む領域に侵入していると報告されています。図aは視床のHE染色で、小血管内に新鮮な血栓（矢印）を認めています。梗塞をきたした脳幹の小血管の内皮細胞（bは延髄，cは橋）の細胞質にウイルスタンパク質が同定されました。

内皮細胞に感染したウイルスが血管障害を助長し、他の脳領域へのウイルスの拡散を促進し、（様々な要因に依存するものの）重篤な病態や持続感染に関与する可能性が考えられました。

一方、小脳のような嗅粘膜と直接関係のない領域でウイルスRNAが検出されたことから、中枢神経系へのウイルス侵入に軸索輸送以外の機序がある可能性が示されました。　（小児科　土谷）