院長先生のブログ
COVID-19 急性期合併症⑲
急性期の神経合併症が生じる機序のうち「2)血管への感染」に関連した話題、SARS-CoV-2ウイルスの脳血管への影響についての論文(Brain. 2023 Feb 13;146(2):418-420.(doi.org/10.1093/brain/awac481))です。
ウイルス受容体ACE-2は大脳皮質の神経細胞にはほとんど存在せず、小血管径を調節する周皮細胞(ペリサイト)に多く発現しています。Ang-IIはAT1Rを介して強力に血管を収縮させるペプチドですが、同時にAT2RのシグナルとAng-IIからACE-2を介したAng-(1-7)への変換によるMasRシグナルにより制御されています。
SARS-CoV-2ウイルスが周皮細胞に感染するとACE-2が内在化し、細胞膜での発現が減少し、小血管の収縮が生じてしまい、脳は虚血性障害にさらされます(この変化はAT1R拮抗薬のロサルタンでブロックされる)。
急性期にSARS-CoV-2ウイルスが脳血管の周皮細胞に感染して虚血性障害を招く機序として、分かりやすい図だったので、紹介させて頂きました。 (小児科 土谷)