院長先生のブログ
COVID-19 急性期合併症⑳
急性期の神経合併症が生じる機序のうち「3)血管脳関門の破綻」に関連した論文(Eur J Neurol. 02 September 2022(doi.org/10.1111/ene.15545))を紹介します。
COVID-19患者14名の剖検脳を用いて血液脳関門を検討したルーマニアの研究です。全例入院患者で、入院後0~24日で死亡していました(3分の1の症例は何らかの神経症状を呈していた)。
方法:血管基底膜と血管周囲アストロサイトの形態を光学顕微鏡で解析し、コラーゲンIV(血管基底膜マーカー)とGFAP(アストロサイトマーカー)、CD31(血管内皮マーカー)、TJ1(密着結合)、AQP4(水チャネル)を免疫組織学的に対照4名と比較しました。
その結果、GFAP陽性アストロサイトのフラクタル次元解析では、COVID-19患者で分枝の複雑さが減少し、GFAPと血管基底膜の骨格を成すコラーゲンIVの共局在が減少していました。また、血管基底膜は対照群と比較して形態的な不規則性が増加していました。
COVID-19患者では血管径がとくに白質において増大し、TJ1の血管内皮との共局在が減少、さらにAQP4とアストロサイトの共局在が減少していました。
以上から、COVID-19剖検脳で血管基底膜の不規則性、血管内皮密着結合の消失、アストロサイト足突起の減少、AQP4の減少が認められ、血液脳関門の破綻が示されました。
全身性炎症と血管脳関門(BBB)の破綻がlong COVIDに伴う神経障害の発症に関与することも報告(Research Square, Jan 23, 2023(doi.org/10.21203/rs.3.rs-2069710/v2))されています。ご興味のある方は是非ご覧ください。 (小児科 土谷)