院長先生のブログ
揉むの?揉まないの?
予防接種をしていると、時折保護者の方から「揉まなくて良いのですか?」と聞かれることがあります。今回はこの予防接種後に「揉む?」「揉まない?」に関する話題です。
まずはじめに、「揉まなくて良いのですか?」の回答だけ先に述べておきます。
→「揉む必要はありません。揉まない方が良いです」
DPTワクチン接種後に接種部位をマッサージすることについて、808人の乳幼児に参加してもらい検証した論文(Acta Paediatr Taiwan 1999; 40:166-70. Effect of local massage on vaccination: DTP and DTPa – PubMed (nih.gov))があります。その結果、免疫原性等についてはマッサージの有無での有意差は見られませんでしたが、局所の疼痛や腫脹はマッサージ群に有意に多かったと報告されています。さらに、揉む程度が強いほど接種箇所の副反応が多かったという結果でした。
つまり、1990年代後半には予防接種後に揉むことに関しては否定的な研究結果がでていたということです。
ちなみに、最近のガイドラインでは『以前は接種後に接種部位を揉んでいましたが、免疫獲得への影響に差がないこと、強く揉むと皮下出血をきたすことがあることから、近年はあまり推奨されていません。軽く圧迫する程度にとどめておけばよいとされています』とのみ書いてあります。
予防接種従事者の方へ | 一般社団法人日本ワクチン産業協会 (wakutin.or.jp)
そして、米国CDC(疾病予防管理センター)発行の「Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases」(通称 Pinkbook)には、出血傾向を有する方に対するワクチン接種の項に「Do NOT rub or massage injection site(接種部位をこすったり揉んではならない)」と記載されています。
以上から、「予防接種後、ワクチン接種部位は揉まない」ということを覚えておきましょう。 (小児科 土谷)