院長先生のブログ
COVID-19 味覚・臭覚障害⑥

急性嗅覚障害を呈したCOVID-19患者7名について検討した論文(Science Transl Med. Jun 02, 2021(doi.org/10.1126/scitranslmed.abf8396))です。
嗅覚神経上皮が主な感染部位で、嗅覚神経細胞、支持細胞、免疫細胞などの複数の細胞が感染していたことが分かりました。また、嗅覚神経上皮におけるSARS-CoV-2の複製は局所的な炎症と関連していました。
更に、SARS-CoV-2ウイルスがゴールデン・シリアン・ハムスターに逆行性侵入することで、急性嗅覚障害と味覚障害を引き起こし、ウイルスが嗅上皮と嗅球に残存する限り持続・再発することが示唆されました。
COVID-19による嗅覚障害が数カ月間持続している患者の嗅覚粘膜を鼻腔ブラッシングで採取したところ、(通常のPCR検査でウイルスRNAが検出されなくても)ウイルス転写産物やウイルス感染細胞が存在し、炎症も持続していたことが分かりました。
以上から、嗅覚神経上皮におけるSARS-CoV-2ウイルスの感染持続とそれに伴う炎症が嗅覚・味覚症状の長期化や再発の原因と推察(損傷を引き起こすかは不明)されました。 (小児科 土谷)