院長先生のブログ
高峰譲吉の「アドレナリン」
日本の化学者の高峰譲吉(1854〜1922;写真)らが発見した「アドレナリン」が医薬品の正式名称として使われることになったことをご存知の方も多いことでしょう!
これまでは米国の学者が命名した「エピネフリン」を使用してきた歴史がありますが、高峰の業績を正しく評価すべきだとの声が高まり、厚生労働省は医薬品の規格基準を定めた公定書「日本薬局方」を改正、1900年のアドレナリン発見以来の“一世紀ぶりの名誉回復”を図りました。
アドレナリンは、高峰と助手の上中啓三が研究生活を送っていた米国で1900年に牛の副腎から初めて抽出したホルモンです。「腎臓の上」を意味するラテン語にちなんで高峰が命名しました。エピネフリンは、高峰より先に抽出したと主張した米国人学者が名づけた名称です。後に、その学者の方法では抽出できないことが判明しましたが、米国ではエピネフリンを使い続けてきました。日本も米国にならったのか、アドレナリンは日本薬局方では長い間、正式名称「エピネフリン」の別名扱い。96年の改正では別名からも消えてしまいました。
その後、高峰の業績に詳しい菅野富夫北海道大名誉教授らが「発見者の母国であり、正式名称にしてほしい」と厚労省に申し入れ、改正薬局方では、エピネフリンが入った名称を別名扱いとし、アドレナリンを用いた名称を正式名にすることが決まりました。
昔の教科書にはエピネフリンと記載されているものがありますが、日本人が最初に発見したのだから「アドレナリン」と言いましょう! (小児科 土谷)