メニュー

   

お電話

見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

心肺蘇生時の「家族の立ち会い」①

心停止アルゴリズムについて復習した際に思いだした論文(N Engl J Med 2013; 368:1008-1018)です。

Family Presence during Cardiopulmonary Resuscitation | NEJM

心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation:CPR)への家族の立ち会いが家族や医療チームに与える影響について検討しています。

 

フランスの15の病院で2009年11月~2011年10月まで実施されたクラスターランダム化試験です。在宅で心停止を起こし、病院到着前CPRを受けた患者家族570人を本試験に登録しました。家族にCPRに立ち会う機会を組織的に提供する群とコントロール群のいずれかにランダムに割り付けました。CPR後90日目にImpact of Event Scale (IES)およびHospital Anxiety and Depression Scale (HADS)を用いてアンケート・電話で家族のスコアリングを行いました。プライマリエンドポイントは、90日目に心的外傷後ストレス障害(PTSD)の関連症状(IES 30点以上)を有する家族の割合とし、セカンダリエンドポイントは、不安・抑うつ症状(HADS 10点以上)、家族の立ち会いそのものが現場のCPR努力に与える影響、医療チームの満足度、法医学的な損害賠償請求の発生などです。尚、ここで定義する「家族」とは第一親等の人間のみ。

 

結果:立ち会い介入群では家族266人中211人(79%)がCPRに立ち会ったのに対して、コントロール群では304人中 131人(43%)がCPRに立ち会いました。95人の家族(17%)がIES解析に同意しなかったため、残りの475人が感度解析に組み込まれました。ITT解析では、PTSD関連症状はコントロール群のほうが立ち会い介入群よりも有意に高く(補正オッズ比1.7、95%信頼区間1.2~2.5、P=0.004)、CPRに立ち会わなかった家族のほうが立ち会った家族よりも有意に高かった(補正オッズ比1.6、95%信頼区間1.1~2.5、P=0.02)ことが分かりました。。

また、CPRに立ち会わなかった家族で不安と抑うつの症状が高頻度にみられました。家族の立ち会いの下でのCPRは、蘇生内容、患者生存、医療チームの心理的ストレスレベルに影響せず、法医学的な損害賠償請求は発生しませんでした。なお、これら両群における患者アウトカム(自発循環の再開、生存した状態での入院、28日生存率)に差は認められませんでした(それぞれp=0.59, 0.42, 0.64)。

 

以上から、患者のCPRへ家族が立ち会うことは心理学的パラメータにおける良好なアウトカムに関連することが分かりました。 

 

このように、蘇生の現場に立ち会った方が家族に良い影響をもたらすとされていますが、対面を御家族に強制してはいけません。ご家族の意思で面会しても、しなくても構わないという選択があることを知らせるべきで、御家族の最終決定が最も尊重されるべきであるということも覚えておきましょう。

そして、蘇生中の面会を御家族が希望される場合、ただ蘇生現場を見せれば良いというものではありません。面会までに行った手技や経過をきちんときちんと説明する必要があるほか、これから何を見ることになるかについて、よく説明して心の準備をさせる必要があります。また、患者の肌に傷やあざ等がある場合は、どうしてそのようなものができたかを説明する必要もあります。ひどい傷やあざなどを御家族に見せる場合は毛布でその部位をカバーしてあげるといった細やかな配慮も必要でしょう。
もし、人員に余裕があれば医師が家族にきちんと説明しながら蘇生を進めると良いと思いますが、不可能であれば経験豊富な看護師が家族に付きそうと良いでしょう。

 

決して家族を放置してはいけません!!(小児科 土谷)

この記事をシェアする