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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

心肺蘇生時の「家族の立ち会い」②

昨日に引き続き、心肺蘇生時の「家族の立ち会い」ですが、今回は小児編です。

 

患者が成人や高齢者であった場合、お子さんやお孫さんなどの子どもがご両親やご家族の臨終で面会する場合もあります。子どもも大人と同じようにグリーフを感じます。子どものグリーフは大人が考えるよりも長く続き、グリーフの表し方が大人の場合と異なるかもしれません。以前、医療従事者向けに書いたものですが、子どものグリーフについて簡単に説明させて頂きます。

親を亡くした子どもへの対応

子どもは「親に守ってもらう」ことで安心して生きてきました。思春期になるまで、子どもは親の能力を自分の一部として生きてきています。そのため、子どもにとって親を失うということは、自分の立つ大地を失うことと同義であり、同時に自分の一部を失うことでもあるのです。従って、親を失った子どもは重大な危機状態にあるといえます。その際に重要な点は、子どもが安心して依存できる人との関係性を構築することです。子どもが信頼できる大人の支えが欠かせません。周囲の大人がきちんと向き合って支え、子どもの気持ちに寄り添うことが求められます。

 

親が亡くなった時にどう伝えるか

事実の伝え方
亡くなったという事実が明らかになった時は、あまり遅くなることなく伝えることが望まれます。「お父さんとお母さんは遠くにお仕事に行っている」などの曖昧な表現を長く続けることは決して好ましくありません。しっかりと向き合って、きちんと伝えなければならず、話す大人の準備も必要です。適切な時期を選びましょう。子どもと出来るだけ近しい人が伝えることが望まれます。子どもにとって見知らぬ人(初めて会う親戚の方、児童相談所の方など)が伝えなければならない場合は、子どもが安心できる人が側にいてあげて下さい。低年齢のお子さんの場合は知っている方が膝に乗せる、手を握るなどしてあげると良いでしょう。
事実を伝える際は、子どもの目線に立って、向き合って伝えましょう。子どもに分かりやすい言葉で亡くなったことを説明しましょう。年齢によっては「死」を理解することは難しいため、できる限り子どもに質問させてあげましょう。後で聞きたいことがあったら、いつでも答えることを告げましょう。告知の場での子どもの反応はさまざまです。何も感じていないようにふるまう子どもさえ少なくありません。しかし、衝撃を受けていない子どもはいません。子どもに対する共感性が最も必要となる場面です。

 

告知した直後に
大人は激励のつもりで自分の考えを子どもに押し付けがちです。しかし、上から目線の言葉、例えば、「お父さんの分も生きなさい」 「いい子にならないとね」 「お母さんが悲しまないようにがんばりなさい」などの言葉は必ずしも子どもにとって温かい言葉ではありません。子どもが涙を流せるなら、それはとても大切な時間です。抱いたり、手を握ったりしながら十分に泣かせてあげましょう。泣かない子どももいます。それは決して薄情なのではなく、どうしていいかわからなかったり、我慢しなければいけないと思っているのです。
全ての子どもの気持ちを大切にして受け入れましょう!子どもが仮に怒りを表現したとしても、それは自然なことです。 「頭に来るよね」などと共感して、その怒りの表現を受け入れましょう。子どもは時として周囲が予想しない行動をしたり表現をすることがありますが、寄り添うことが最も大切です!

 

ご遺体との対面
通常であれば、ご遺体と対面してお別れをすることは子どもにとって重要です。現在は、ある程度のご遺体の損傷があっても、きれいな形への修復ができます。激しい損傷のない部分だけが見えるようにして対面することが可能であれば、それもありでしょう。子どもが衝撃を受けすぎない形で、何らかの対面とお別れが出来ると良いでしょう。どうしても難しい場合、お棺の上にお花と写真やゆかりの品を乗せて、お別れをすることでも意味があり ます。

 

子どもの「死」の理解

子どもがどの程度「死」を理解できているかは発達段階とそれまでに死の場面にどのように出会ってきたかによって異なります。一般的に、4歳以降は「死」ということをある程度理解していますが、幼児期にはあっちの世界に会いに行って戻って来られると思っていたり、再生できると思っていたりすることもあります。小学生の年代になると、生きているものは死ぬ可能性があることは理解しますが、死が全ての人に起きることであることを理解することは難しいものです。中学生の年代以降は、たいていの子どもは大人と同じように、「死」は生物体として永久に生命活動を失うことであると理解していますが、少数の子どもでは、まだ十分に理解できていない場合もあります。子どもが「死」に関して質問してきたら、魂は別の世界に行って戻ってこないこと、心の中に思い出として生きているが会いには行けないこと、身体は土にかえることなどを説明しましょう。可能であれば、子どもの育った家庭の宗教や文化を考えて説明に織り込むと良いでしょう。 大人であっても「死」を語ることは避けたいものです。しかし、我々大人が避ければ、子どもは表現する機会を失ってしまいます。ごまかさずに、誠実に向き合って答えましょう。

 

ちょっと長くなってしまったので、子どもに対する一般的なケアについては明日にします。(小児科 土谷)

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