院長先生のブログ
long COVIDの病態 -その他⑨-
認知機能障害発症に関与する血液バイオマーカーを検討した論文(Nat Med (2023). https://doi.org/10.1038/s41591-023-02525-y)を紹介します。
2020年1月から2021年11月までにCOVID-19により入院した1837人を調査しました。
認知機能に対する医師による客観的評価と患者による主観的評価は6カ月後と12カ月後に行われました。
この結果、2種類の血液バイオマーカーが特定されました。
1つ目:CRPに対するフィブリノゲンの上昇で、客観的認知障害と主観的認知障害の両方と相関しました。
2つ目:CRPに対するDダイマーの上昇で、主観的な認知障害だけでなく、疲労や息切れとも関連がありました。
これらの知見は、米国で1万7911人の電子カルテを用いて行われた別のコホートでも確認されました。
メカニズムとして、前者は炎症物質としての直接作用(フィブリノゲンは急性相タンパク質のひとつ)や過凝固状態が、後者は脳や肺血管の微小血栓が関与している可能性が推測されています。
フィブリノゲンとD-ダイマーなら一般病院でも簡便に検査可能なので、入院患者の認知症発症リスクを予測するうえで、臨床現場で役立てられそうですねw (小児科 土谷)