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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

アセトアミノフェンと熱性けいれん

外来をしていると、熱性けいれんの既往のある保護者の方々から解熱剤に関する質問をされます。

よく聞かれる質問なので、今日はそれに関連した日本からの論文(Pediatrics (2018) 142 (5): e20181009.)を紹介します。少し古めの論文なのでご容赦くださいw

Acetaminophen and Febrile Seizure Recurrences During the Same Fever Episode | Pediatrics | American Academy of Pediatrics (aap.org)

 

〔対象患者〕

2015年5月1日~2017年4月30日まで行われた研究で、中枢神経系感染症を伴わない、体温38℃以上の状態でけいれん発作を起こした熱性けいれんの6-60か月の子どもが対象となりました。

以下の要件を満たす子どもは除外されています。

  • 今回の発熱ですでに2回以上の再発があった児
  • 15分以上けいれん発作が続いた児(熱性けいれん重積)
  • てんかん, 染色体異常, 先天代謝異常, 脳腫瘍, 頭蓋内出血, 水頭症, 頭蓋内手術の既往がある児
  • 予防的にジアゼパムが投与されている児
  • 抗ヒスタミン薬が投与されている児
  • 下痢がみられる児

 

〔研究方法/デザイン〕患者を無作為に以下の2群のいずれかに割り付けました。

  • 投与群: 体温が38℃以上の場合、アセトアミノフェン坐薬 (10mg/kg)を6時間毎に24時間まで投与
  • 非投与群: 24時間までいずれの解熱薬も投与しない(プラセボも使用していない)

研究期間中に794人が受診し、そのうち438人が研究対象となりました。438人をアセトアミノフェン投与群(n=229)と非投与群(n=209)のいずれかに無作為に割り付けました。438人のうち15人がプロトコールを遵守しなかったか、経過を追えなかったため、最終的に423人の患者のデータから分析を行ないました。

 

〔結果〕

投与群と非投与群で患者背景などに差は認められませんでした。
同じの発熱エピソード中の熱性けいれん再発の16%で、すべて最初の熱性けいれんから24時間以内に発生していました。

すべての年齢群で、同じ発熱エピソード中の熱性けいれんの再発率は非投与群と比較して投与群で低かった(投与群9.1% vs 非投与群 23.5%;6-21か月: 投与群 13.2% vs 非投与群 24.3%, 22-60か月: 投与群 4.1% vs 非投与群 22.6%)ことが分かりました。

再発がみられた群と再発がみられなかった群では、以下のような特徴がみられました。

  • 年齢が低い
  • けいれん発作時間が短い
  • アセトアミノフェン使用群の割合が低い

最終的なロジスティック回帰分析では、アセトアミノフェン坐薬の使用の有無が同じ発熱エピソードでの熱性けいれん再発のもっとも大きな寄与因子でした。

 

以上から、アセトアミノフェン坐薬を使用すると、同じ発熱エピソードにおける熱性けいれんの再発リスクが低下する可能性がある(要するに、解熱薬を定期的に使用すると熱性けいれんの再発が減る)ことが分かりました。

 

ただ、この論文の結論には、「熱性けいれんの予後が一般的に良好であることから、(定期的使用は)やはり推奨しない」と記載されています。

 

以上をを考えると、「熱性けいれんの際の解熱薬使用はいけないことではありません。ただし、再発予防のために定期的に使用することは推奨されません」という方向に落ち着きそうです(ガイドラインを覆すに及ばない)。

 

熱性けいれん患児の保護者の抱える不安は非常に大きいことがこれまでにも指摘されています。

解熱剤を適切に使用することで、保護者の不安を少しでも軽減できるのであれば、個人的には使用しても構わないと思っていますが、乱用することは避けましょう。 (小児科 土谷)

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