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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

小児の多系統炎症症候群(MIS-C)

今日は珍しくCOVID-19についてです。
(GW明けからCOVID-19の扱いが5類相当に変わるので)COVID-19に関する医療機関向けの説明会が昨日開催されたため、小児も絡めた話題を思いついてみました。

欧米ほどではないにせよ、日本でもCOVID-19感染後にMIS-Cと診断された子どもが少なからず存在することが分かっています(今年1月のNHKでもMIS-Cについて報道されていました)。未だ、変異株の出現とMIS-Cの臨床症状や転帰との関連性は詳しく分かっていませんが、それに関する論文(N Engl J Med. 2023 Apr 27;388(17):1624-1626. doi: 10.1056/NEJMc2215074. Epub 2023 Mar 22.)を目にしたので紹介します。

国際川崎病レジストリ(IKDR)のデータを用いて、2020年4月~2022年6月までの期間にSARS-CoV-2感染で入院し、米国疾病管理予防センター(CDC)によるMIS-Cの基準を満たした患児を検討しています(計2017名の患児が登録)。

その結果、デルタ株(B.1.617.2)およびオミクロン株(B.1.1.529)流行期の患児は、武漢株およびアルファ株流行期の患者に比べて、年齢層が若く、川崎病症状との類似性が高く、呼吸機能障害や冠動脈拡張の発生率が低いことが分かりました。

武漢株の出現以降、治療でステロイド剤を使用する頻度が増加するにつれ、重篤な合併症(不整脈、心停止、腎合併症、凝固障害、血栓症)、集中治療室への入院、死亡のリスクは減少していました。すべての変異株流行期間を通じて、心機能障害のリスクは、アルファ株流行期に入院した患児で最も高かったことがわかりました(武漢株と比較:35% vs. 28%, 相対リスク:1.19, 95%信頼区間:1.04~1.35)。症状は時間経過とともに全体として軽症化する傾向にあったものの、重症例の占める割合は依然として高く、オミクロン株流行期の患児の23%がショックを呈し、37%が集中治療室に収容されていたことが分かりました。

 

オミクロン株に置き換わった後も、MIS-Cのような病態が一定数継続して認められ、重症例の割合は思ったよりも減っていないみたいです(冠動脈拡張の発生率が低い傾向にあることは歓迎すべきことですが、ショックやICU入室者の割合があまり減っていないのはいただけません)。

幸いMIS-Cと確診された患者さんに自分は遭遇した経験はまだありませんが、一般的な川崎病急性期も心機能障害をきたすことがあるため、実際に遭遇したらMIS-Cなのか判断に迷う場合もあるなーっと思いつつ論文を読んでいました(イメージ的には消化器症状の強い川崎病という感じでしょうか)。まだMIS-Cの病態が川崎病と同一かどうか判明しておらず、治療に関するデータも十分に集まっていないことから、COVID-19の余病としてMIS-Cは要注意です。MIS-Cそのものは間違いなく重い病態だと思いますので。

COVID-19がGW明けから5類相当に変更された後、(世間的にはあまり注目されなくなると思いますが)COVID-19の感染動向、・合併症・重症例(MIS-Cを含む)の推移などは引き続き注意して見ていこうと思います。 (小児科 土谷)

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