GW中に見かけたネット記事にアメリカで高齢者対象のRSウイルスワクチンが世界初承認された記事が載っていました。もちろん、Natureにも「今日は良い日だ！アメリカCDCが世界最初のRSウイルス用ワクチンを認可した」というニュースが出ていました（Nature. 2023 May 3. doi: 10.1038/d41586-023-01529-5.）。

今回のRSV用コンポーネントワクチン（ウイルス蛋白質を使ったワクチン）に関する元ネタは今年2月のNew England Journal of Medicine（N Engl J Med 2023; 388:595-608 DOI: 10.1056/NEJMoa2209604）に出ています。高齢者の感染予防に関する有効率は82.6％、重症化予防に関する有効率は94.1％で、重大な副反応はきわめて稀と記載されており、非常に優秀なワクチンであることが読み取れます。

RSウイルスは高齢者だけでなく、新生児・乳児や先天性心疾患をもつ子どもに重篤な症状を起こすことから、小児科領域でもRSVに対するワクチンは重要なワクチンとなります。現在、妊婦や乳児の臨床試験も現在進行中なので、良い結果が期待されます。

ちなみに、何故「今日は良い日だ！」と喜んでいるかというと、RSウイルスに対するワクチン開発は、1960年代に始まったのですが、最初の全粒子不活化ワクチンが色々と残念な結果となり、その後に開発された（ウイルス粒子上のF蛋白質を標的とした）蛋白質ワクチンも効果が低く、臨床試験が失敗に終わったという失敗の歴史があったからだと思います。これまでの課題を一つずつ解明・解決して、開発開始から約60年経ち、ようやく優秀なワクチンが世に出てきたという訳です。医学の進歩、そしてワクチン開発に携わった研究者の皆さんの熱意の賜物ですね。　素晴らしい！　（小児科　土谷）