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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

子どもは音を立てずに溺れます

夏は例年海やプールの事故が増えますが、4歳までの子どもが一番よく溺れる場所は自宅の浴槽です。

 

2019年に日本小児科学会が、東京、北海道、長野、京都、愛媛など全国の保育施設83施設の約8700名の児の保護者を対象に、お風呂で溺れかけた溺水トラブルについて調査を行いました。そのうち回答のあった約5500名の調査結果をまとめた報告書が先日小児科学会のウェブサイトで公開されています(https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/dekisui_chousa_houkoku.pdf)。

今日はその調査結果を参考に、自宅の浴槽で起こる子どもの溺水について考えましょう。

 

1歳~3歳で高い溺水のリスク! 子どもの場合、静かに溺れる可能性もある!

今回の調では、溺れかけたことがあると答えた児の割合は5500名のうち1160名(21%)おり、1歳が47%と半数近くに上り、3歳までで全体の88%と9割近くを占めました。この年齢層(1~3歳)は特に注意が必要と考えられます。

子どもが溺れるときの様子は?

米国の沿岸警備隊や陸軍のサイトでは「人は溺れるときは声を出さず、水面を叩くわけでもなく静かに沈む」と啓発しています。口は呼吸をするのに精一杯で、助けを求める発話をする余裕はなく、また手を振って助けを求める余裕もないのです。つまり、溺れるときは「バシャバシャすることなく静か」である可能性を考えなくてはなりません。勿論、それは子どもでも同じだと思います。

 

日本小児科学会の報告では、溺れかけた時に悲鳴や助けを求める声を出していたのか、の質問に対し、86%は出していなかった、と答え、バシャバシャ音を立てなかったという例も33%ありました。実際には全例が何の音もたてずに沈んだわけではありませんが、多くは声を出す間もなく、また3割は音を出すこともなく沈んでいるとの結果でした。

今回の報告から、少なからず音も立てずに沈んでいるケースがあったことが分かりました。

この事実は溺水予防を考える際、とても大切なポイントで、「離れた場所で家事をしていても、子どもが溺れても音で気づくだろう」という対応では溺水を見逃す可能性があることを意味しています。

 

保護者の家事マルチタスクや対策不備は事故のリスクとなる

子どもの事故予防という観点から自宅が潜在的に持っているリスクは保護者が家事のマルチタスクに追われていることです。これに関連して、先の日本小児科学会の調査でも、入浴中の溺水トラブルの予防に関して報告されています。

例えば、予め溺水予防の工夫(「子どもだけで入浴させない」「親が身体を洗うときは湯船から出す」「入浴中の電話に絶対出ない」「残し湯をしない」)をしていた家庭では、溺水トラブルの発生も少ない傾向がありました。また、「特に工夫をしていない」と答えていた家庭では溺水トラブルの頻度が多めでした。この結果から、予め対策を立てることで、子どもの家庭での溺水事故を減らせる可能性があることが分かりました。

特に、入浴に際して複数の大人が関わる、残し湯をしない、と答えた家庭で溺水トラブルが起きにくかったこと、また、実際に溺水トラブルが起きた家庭の多くでは、溺水後に「複数の大人が関わる」に加えて「親が髪を洗うときに湯船から出す」などを追加の対策として取り入れていたことも報告されています。

その一方、溺水が起きた後に「残し湯をしない」対策を取り入れたと答えた家庭はあまり多くなく、この対策が有効な手段としてまだ認知されていない可能性もあります。

 

家庭で役立つ溺水予防対策

アメリカ小児科学会は子どもの溺水予防策として次のような項目を挙げています。参考にしましょう!

①保護者はお風呂、プール、排水溝、池等の近くでは幼児を一人にしたり、他の子どもの世話をしたりしてはいけない。

②子どもはバスタブの水深がわずか数センチでも溺れる可能性があり、必ず大人と一緒にいる必要がある。

③家庭内のバケツなどの容器は、使った後必ず空にする。

④監視されていない状態でお風呂、プールなどに入らないようにする。

⑤乳幼児が水中や水の周りにいるときは、大人が腕の長さ以内にいること

⑥監視する大人は電話の使用をはじめとする、外とのコミュニケーション、雑用、飲酒など注意を損なう可能性のある活動を行わない

⑦自宅のプールは子どもだけで入ることのないようにフェンスで囲う。

⑧保護者は心肺蘇生法を学び、いざというときに対処できるようにする

 

家庭での子どもの溺水事故を防ぐために、出来ることから1つずつ始めていきましょう! (小児科 土谷)

 

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