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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

子宮頸がんファクトシート -ワクチン編②-

昨日に引き続き、子宮頸がんファクトシートを読み解いていきます。

子宮頸がんファクトシート | がん対策研究所 (ncc.go.jp)


今回はHPVワクチンの副反応についてです。

これに関しては過去のブログでも取り上げました。では、このファクトシートではどのように評価されているのでしょうか?

 

HPVワクチンの副反応として、接種した場所の痛みや腫れといった局所反応がよく起きることが知られています。全身反応はどうでしょうか?

 

HPVワクチン接種後に生じた様々な症状

HPVワクチンの市販承認後に副反応報告が増加し、2013年4月の定期接種化から2か月後に「積極的勧奨の差し控え」という措置がなされました。この状況に伴い、HPVワクチンの接種率は激減し、問題がクローズアップされてから約2年後をピークに副反応疑い症例が多く報告されました。(尚、2021年11月の積極的勧奨再開決定後に、副反応を疑う症状の報告数が増えたましが、これは接種数も100倍近く増えたため)。

 

「慢性の痛み診療の基盤となる情報の集約とより高度な診療の為の医療システム構築に関する研究」

2013年~2014年度に厚生労働科学研究費補助金慢性の痛み対策研究事業(研究代表者:牛田享宏)で実施された研究では、HPVワクチン接種後に体調の不調を訴えた204名の患者の症状・所見を調査したところ、疼痛や全身倦怠感、立ちくらみなどの機能性症状を訴えるものが多かったとする一方、器質的な病態を示唆する身体所見や血液学的、症候学的な異常が診られるケースは少なかったと報告しています。

 

子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究

2015年~2017年度厚生労働科学研究費補助金「子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究」(研究代表者:祖父江友孝)でも、副反応疑いに関する追跡調査が行われています。全国の指定協力医療機関を通じて、HPVワクチン接種歴がありかつ組入れ基準(症例定義)を満たす患者とその家族に協力を依頼し、自記式質問紙票による調査を行っています。

登録は56例(登録時の平均年齢:18.2歳)で、直近のワクチン接種日から約4年が経過していました。症状出現時期は、直近のワクチン接種日から1ヵ月以内が37.5%、1年以内が76.8%でしたが、発症日が不明の2例を含む約2割の患者はワクチン接種から1年後以降に症状が出現したとされています。

「最もつらかった症状」の集計では、1位:頭痛、次いで、体幹や関節の痛み、めまい・立ちくらみ、手足の痺れ感、ふるえなどの症状が挙げられていたことが報告されています。

また、同研究班で別途実施された全国疫学調査によると、HPVワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の「多様な症状」の推定有訴率は、男性では20(人口10万人対)、女性では40(人口10万人対)、HPVワクチン接種歴のない女性では20(人口10万人対)であり、接種歴の有無にかかわらず「多様な症状」を有する者が一定数存在するという結論でした。

 

これらの評価をまとめると、HPVワクチンを接種していない人にも同様の体調不良が起きることを示した名古屋スタディ、祖父江班の二つの研究と、審議会での議論、国際的な議論を総合的に判断すると、HPVワクチンの副反応リスクという点では、HPV感染のデメリットと比べて接種による子宮頸がん予防のメリットの方が大きいと思われます。

 

次回は、これに関連して予防接種ストレス関連反応を取り上げたいと思います。 (小児科 土谷)

 

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