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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

熱性痙攣の再発する確率は?

先日、診察後の待合室で痙攣(いわゆる「ひきつけ」)を起こしたお子さんがいました。

典型的な単純型の熱性けいれんだったので、あれこれ説明して帰宅する運びとなりましたが、保護者の方から「再発」に関する質問があったので、今日は熱性痙攣の再発に関する話題にしたいと思います。

 

熱性けいれんの予後は良好とされていますが、再発することがあることも知られています。

熱性けいれん再発の危険因子として、①最初の熱性けいれんが1歳未満である、②熱性けいれんの家族歴がある、③発作発症時の体温が38℃未満である、④発作前の発熱期間が1時間未満である、などが知られていますが、熱性けいれん発作がその後の再発やてんかん発症にどのような影響を及ぼすか不明でした。そこで、今朝の論文(JAMA Pediatr. 2019 Dec 1;173(12):1164-1170.)を紹介します。若干古めの論文なのはご容赦ください。この論文は、デンマークの大規模コホートにおいて、熱性けいれんの既往が再発リスクやてんかん発症に関連があるかどうか調べています。

 

《方法》

デンマーク市民登録システムを用いて、1977年1月1日~2011年12月31日の間にデンマークで生まれ、生後3か月時点でデンマークに住んでいたすべての小児を抽出しました。生後3か月~5歳までの間に、入院または外来診療で熱性けいれんと診断されたものを「熱性けいれん」としました(その時点でてんかんや脳性麻痺、頭蓋内腫瘍、重度の頭部外傷、頭部外傷、頭蓋内感染症の既往がある場合は、熱性けいれんとは診断せず)。すべての小児を、少なくとも5年間追跡調査しました。「熱性けいれんの再発」は、7日以上間隔をあけて2回以上、発熱時にけいれん発作を発症した小児と定義しました。

 

《結果》

210万人の小児が対象となり、生後3か月~5歳までに熱性けいれんと診断をされたのは75593人(3.6%)でした。1歳半頃にけいれんする小児が多かったことが分かりました(下図)。

《熱性けいれんの再発リスク》

少なくとも1回の熱性けいれんを起こした75593人の小児は、熱性けいれんの再発リスクが高く、熱性けいれんの再発のリスクは、最初の熱性けいれんの後で22.7%、2回目の後では35.6%、3回目の後では43.5%でした。

また、2歳以前に初めて熱性けいれんを発症した小児では再発リスクは26.4%でしたが、2歳以降に熱性けいれんを発症した小児では再発リスクは11.8%でした。

 

《てんかんを発症するリスク》

てんかんを発症するリスクは、熱性けいれんによる入院の回数が多いほど高くなりました。

30年間のてんかんの累積発生率は、出生時では2.2%、最初の熱性けいれん後では6.4%、2回目の熱性けいれん後では10.8%、3回目の熱性発作後では15.8%となりました。

《考察》

今回のコホート研究で、熱性けいれんを繰り返している小児でてんかんのリスクが上昇することが判明した(そのリスクは熱性けいれんを2回以上起こした小児で高い)。 補足参照

熱性けいれんの再発のリスクは、初回熱性けいれん後で22.7%となっており、さらに熱性けいれんを繰り返すほど再発リスクが高まることが分かりました。

《結論》

熱性けいれんの再発は、てんかんのリスクとなる。熱性けいれん既往のある小児、特に熱性けいれんを繰り返す小児では、てんかんの徴候に注意し、早期発見と治療を確実に行う必要がある。

 

《補足》

てんかんを発症する確率が熱性けいれんを繰り返すごとに高まる(出生時で2.2%、最初の熱性けいれん後で6.4%、2回目の熱性けいれん後で10.8%、3回目の熱性発作後で15.8%)のは確かだが、「熱性けいれんを繰り返すと、てんかんを発症しやすい」というのも言い過ぎ。「熱性けいれんを2回繰り返しても、9割はてんかんを発症しない」という表現が、もっとも誤解なく伝わるように思います。

 

最後に注意点です。今回の論文は「熱性けいれんがてんかん発症と関連したことを示した」だけであり、熱性けいれんがてんかんの原因であることを示したものではありません。熱性けいれんはてんかんの原因とはならないと現在は考えられています! (小児科 土谷)

 

 

 

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