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見附市小児科 2023年春開院 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

小児のlong COVID

COVID-19は様々な問題を我々に投げかけます。その1つがlong COVIDと呼ばれる後遺症です。

そして、その問題はそのまま小児にも当てはまるのです。今日は小児のlong COVIDに関する話題です(Nat Rev Microbiol. 2023 Jan 13:1–14.)。

 

概要を紹介します。

15-19 歳のlong COVID患者では、疲労、頭痛、めまい、呼吸困難、胸痛、味覚障害、食欲減退、集中力低下、精神疲労、身体疲労、睡眠障害が同年齢の者と比べて 2~36 倍も高いことが分かりました(成人と同様、小児も疲労や認知機能障害を呈する)。

稀だが、肺塞栓症、心筋炎・心筋症、静脈血栓塞栓症、腎不全、1 型糖尿病のリスクが増加し、COVID-19に感染していた女性から生まれた児は、出産後 1 年以内に神経発達遅延の診断を受ける可能性が高いことが分かりました。

中等度から重度のlong COVIDを呈する青年には、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群と一致した特徴が認められ、long COVIDを経験した小児では、成人と同様の脳の代謝低下が認められました。

 

感染した小児は、数週間後にセロコンバージョンするにもかかわらず、PCR陽性になる確率が成人よりかなり低く、最大で90%の症例が見逃されているとされています。

 

小児のlong-COVIDも真剣に考えるべき時期です

海外では、小児が重症化しにくいからと言って、小児におけるワクチン接種を推進せず、感染拡大を容認する国々に対して厳しい批判が起こっています。

 

小児のlong COVIDに関連する論評を一部抜粋して紹介します(Nature. 2022 Feb;602(7896):183.)。

 

*英国だけでも数万人の子どもや若者がlong COVIDに罹患する可能性を議論
*小児の感染例が増えれば、小児のlong COVIDが増えるだけでなく、多くの人に感染が拡大する
*小児の大半がワクチンを受けていない国において、小児が重症化しにくいからと言って感染拡大を容認することは、政府が責任を放棄していると言える

*小児のlong COVIDの研究に関して、10代の小児を対象としたものは少なく、11歳以下を対象としたものはさらに少ない

*現在進行中のCOVID-19関連の臨床試験のうち、10代や青年を対象としたものはない
*大人が先に研究され、子供は後回しにされるのは、安全上の理由もあるが、治療を小児で試す前に大人で試すことができるため
*しかし、今後、臨床試験に若い世代を参加させる必要がある。11歳以下の子どもたちのデータを得るのは難しく、保護者からのインフォームド・コンセントの取得といった課題もあるが、もしこのまま何もしなければ,long COVIDをきたす子どもたちは今後も増えつづけ、そして治療もなく取り残された存在になるであろう。

 

現時点で、まだlong COVIDに対する治療は確立していません。重症化する確率、long COVIDに悩まされる確率がゼロではない以上、最低限の感染対策は継続しつつ、ワクチンを接種できる人は接種しておく方が良いでしょう。 (小児科 土谷)

 

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